講演情報
[47]超音波診断装置を活用した医師・理学療法士の協働的臨床推論が早期改善につながった急性腰殿部痛の一症例
*岸本 拓也1、工藤 正和1、藤川 智宏1 (1. HITO病院 リハビリテーション部)
キーワード:
仙腸関節痛、超音波画像評価、協働的臨床推論
【はじめに,目的】
腰殿部痛における仙腸関節痛(以下;SIJP)の割合は15〜30%と報告され、重症例では著しい日常生活動作(以下;ADL)制限を呈する。また、強い疼痛により身体評価や理学療法介入が制限され、疼痛要素が複合すると治療方針決定に難渋することがある。今回、体動困難を呈した急性腰殿部痛症例に対し、超音波診断装置(以下;エコー)を活用した医師と理学療法士の協働的な病態理解により、早期疼痛軽減とADL改善に至ったため報告する。
【方法】
対象は40歳代男性。2025年X月Y日、急性左腰殿部痛により体動困難となり当院へ救急搬送。診察ではSIJPが疑われ、疼痛許容範囲で理学療法開始となった。しかし、安静時NRS10、動作時NRS10で、疼痛により基本動作や食事姿勢保持、排泄動作が困難であり、早期疼痛軽減によるADL改善が必要と考えた。13年前の頚髄症術後より右腰部~鼠径部痛を認めていたが、今回左仙腸関節部の抜けるような痛みが出現し、既存痛も増悪していた。MRIでは、明らかな神経圧迫所見、腱反射異常及び感覚障害は認めなかった。左仙腸関節部痛は、疼痛部位、疼痛性状、Patrickテスト陽性、Gaenslenテスト陽性、ASLR陽性、仙腸関節スコア9点より左仙腸関節由来疼痛が疑われた。エコーでは、左PSISレベルで圧痛部位と一致した仙腸関節周囲のドプラ反応を認めた。右腰部~鼠径部痛は、解剖学的走行を参考に腸骨下腹・鼠径神経(以下;IHN・IIN)領域を評価し、エコー下圧痛による疼痛再現、伸張負荷での症状再現、腹横筋・内腹斜筋の収縮動態低下を認めた。これらの所見を医師と共有し治療方針を協議した。理学療法単独では、早期疼痛軽減とADL改善に時間を要すると考え、Y+3日に医師により左仙腸関節ブロック及び右IHN・IINへのハイドロリリースが施行し、運動療法を実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者へ発表目的および個人情報保護について説明し、同意を得た。
【結果】介入後、疼痛誘発テストは陰性化し、安静時NRSは10から0、動作時NRSは10から2へ改善。疼痛軽減に伴い同日より独歩可能、Y+4日にはシャワー浴自立となった。
【考察】
本症例では、新規出現した左SIJPと増悪した右腰部~鼠径部痛が共にADL制限に影響していた。エコーにより疼痛再現部位、組織動態、ドプラ反応といった身体所見では捉えにくい評価を可視化できたことが疼痛要因解明の一助となった。また、上記情報を基に医師と病態理解を共有したことで、左SIJPだけでなく、右IHN・IIN領域に関連する疼痛も介入対象として共通認識を持ち、一連の治療方針を協働して検討できた。エコーを用いた協働的臨床推論は、病態に応じた治療方針決定を支援し、医師による治療と理学療法を組み合わせた効率的かつ効果的な運動療法の展開に寄与し得る。
腰殿部痛における仙腸関節痛(以下;SIJP)の割合は15〜30%と報告され、重症例では著しい日常生活動作(以下;ADL)制限を呈する。また、強い疼痛により身体評価や理学療法介入が制限され、疼痛要素が複合すると治療方針決定に難渋することがある。今回、体動困難を呈した急性腰殿部痛症例に対し、超音波診断装置(以下;エコー)を活用した医師と理学療法士の協働的な病態理解により、早期疼痛軽減とADL改善に至ったため報告する。
【方法】
対象は40歳代男性。2025年X月Y日、急性左腰殿部痛により体動困難となり当院へ救急搬送。診察ではSIJPが疑われ、疼痛許容範囲で理学療法開始となった。しかし、安静時NRS10、動作時NRS10で、疼痛により基本動作や食事姿勢保持、排泄動作が困難であり、早期疼痛軽減によるADL改善が必要と考えた。13年前の頚髄症術後より右腰部~鼠径部痛を認めていたが、今回左仙腸関節部の抜けるような痛みが出現し、既存痛も増悪していた。MRIでは、明らかな神経圧迫所見、腱反射異常及び感覚障害は認めなかった。左仙腸関節部痛は、疼痛部位、疼痛性状、Patrickテスト陽性、Gaenslenテスト陽性、ASLR陽性、仙腸関節スコア9点より左仙腸関節由来疼痛が疑われた。エコーでは、左PSISレベルで圧痛部位と一致した仙腸関節周囲のドプラ反応を認めた。右腰部~鼠径部痛は、解剖学的走行を参考に腸骨下腹・鼠径神経(以下;IHN・IIN)領域を評価し、エコー下圧痛による疼痛再現、伸張負荷での症状再現、腹横筋・内腹斜筋の収縮動態低下を認めた。これらの所見を医師と共有し治療方針を協議した。理学療法単独では、早期疼痛軽減とADL改善に時間を要すると考え、Y+3日に医師により左仙腸関節ブロック及び右IHN・IINへのハイドロリリースが施行し、運動療法を実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者へ発表目的および個人情報保護について説明し、同意を得た。
【結果】介入後、疼痛誘発テストは陰性化し、安静時NRSは10から0、動作時NRSは10から2へ改善。疼痛軽減に伴い同日より独歩可能、Y+4日にはシャワー浴自立となった。
【考察】
本症例では、新規出現した左SIJPと増悪した右腰部~鼠径部痛が共にADL制限に影響していた。エコーにより疼痛再現部位、組織動態、ドプラ反応といった身体所見では捉えにくい評価を可視化できたことが疼痛要因解明の一助となった。また、上記情報を基に医師と病態理解を共有したことで、左SIJPだけでなく、右IHN・IIN領域に関連する疼痛も介入対象として共通認識を持ち、一連の治療方針を協働して検討できた。エコーを用いた協働的臨床推論は、病態に応じた治療方針決定を支援し、医師による治療と理学療法を組み合わせた効率的かつ効果的な運動療法の展開に寄与し得る。
