講演情報

[39]飲水負荷がBIAによる下肢骨格筋量測定に及ぼす影響
 ―系統誤差,MDC95およびLOAを用いた検討―

*野々瀬 翔吾1、出口 憲市2、田村 靖明1、橋本 祐司1、森 和之1、島田 祐希1、平岡 友望1、安部 一也1、柳澤 幸夫3 (1. 徳島県鳴門病院 リハビリテーション技術科、2. 徳島県鳴門病院 医療技術局、3. 徳島文理大学 保健福祉学部 理学療法学科)

キーワード:

体組成、水分負荷、測定誤差

【はじめに,目的】
 近年,高齢者における骨格筋量低下は身体機能や予後に影響を及ぼすことが報告されており,サルコペニア評価のため体組成評価の重要性は高まっている.また,スポーツ分野においても体組成分析はトレーニング効果の判定に重要である.生体電気インピーダンス法(BIA)は,臨床および研究分野において,非侵襲的的に実施できることから広く用いられている.しかし,BIAによる測定値は体内水分量の影響を受けることが知られており,水分摂取による測定誤差が臨床的解釈に及ぼす影響については十分に検討されていない.そこで本研究では,水分500mL摂取前後における下肢骨格筋量の変化を検証し,系統誤差の有無を確認するとともに,最小可検変化量(MDC95)および誤差の許容範囲(LOA)を算出し,水分摂取に伴う測定誤差の許容範囲を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 対象は,体内に金属封入物のない健常成人男性10名とした.測定装置は,多周波数インピーダンス法を用いたInBodyS10(S10)およびタニタMC-780MA-N(タニタ)を使用した.S10は,5分間の安静立位後に立位測定を実施し,続いて5分間の臥位安静後に臥位測定を行った.タニタは,立位測定のみ実施した.測定終了後,500mLの水を摂取させ,同様の手順にて測定を実施した.
 系統誤差は,加算誤差および比例誤差から評価した.加算誤差は対応のあるt検定,比例誤差はPearsonの相関係数を用いて検討した.さらに,系統誤差の有無に応じてLOAまたはMDC95を算出した.
【倫理的配慮,説明と同意】
 本研究はヘルシンキ宣言に準拠して実施した.対象者には事前に文書および口頭にて研究内容を説明し,同意を得た後に研究を開始した.
【結果】
 水分摂取前後の下肢骨格筋量について,S10立位およびS10臥位において加算誤差を認めた.一方,タニタでは系統誤差を認めなかった.系統誤差を認めなかったタニタについてMDC95を算出した結果,0.36kgであった.系統誤差を認めたS10立位およびS10臥位についてLOAを算出した結果,-0.02~0.86kg,0.05~0.55kgであった.
【考察】
 S10立位およびS10臥位では飲水後に正方向への測定値の偏りを認めた一方,タニタでは系統誤差を認めなかった.飲水直後に測定を実施したことから,本研究で認められた下肢骨格筋量の変化は,細胞外水分量の変化のみでは説明できない可能性があり,水分負荷による体重増加や機種ごとの推定アルゴリズムの違いが影響した可能性が考えられた.以上より,BIAによる骨格筋量評価では,測定条件および機種ごとの誤差特性を考慮する必要がある.また,経時的評価を行う際には飲水条件を統一するとともに,本研究で算出したLOAおよびMDC95が真の変化を判定する際の参考指標となる可能性が示された.