講演情報

[4]人工股関節全置換術後3か月の歩行能力に関連する術前因子の検討

*青木 夏子1、小田 翔太1、東根 風志1、細田 里南1 (1. 高知大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

キーワード:

人工股関節全置換術、歩行速度、位相角

【はじめに,目的】
人工股関節全置換術(Total hip arthroplasty:THA)は疼痛の改善や身体機能の向上に有効な治療法であるが,術後早期の歩行能力の回復には個人差があり,歩行能力の低下は生活の質の低下につながる。そのため,術後歩行能力に影響を及ぼす術前因子を明らかにすることは予後予測において重要である。本研究の目的は,THA術後3か月の歩行能力に関連する術前因子を明らかにすることである。
【方法】
対象はTHAを施行し,術後3か月まで追跡可能であった111例111股(平均67[42-85]歳,女性96例)である。術後3か月の歩行速度1.0 m/s以上を歩行良好群,未満を歩行不良群に分類した。術前評価項目は,疼痛出現から現在までの期間(罹病期間),安静時痛,運動時痛,等尺性股関節外転筋力体重比,10m歩行時間を測定した。また体組成計を用いて位相角(Phase Angle;PhA)を測定した。統計解析は,Shapiro-Wilk検定より正規性を確認後,2群間比較にMann–Whitney U検定を用い,有意差を認めた項目を説明変数,術後3か月の歩行能力を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には研究内容を十分に説明し,同意を得て実施した。
【結果】
各評価項目(中央値[四分位範囲],良好群/不良群)の比較では,年齢:62[57–69]/76[71–79]歳,運動時痛:40[3-59]/58[25-74]mm,10m歩行時間:9.55[8.23-11.33]/14.30[10.52-17.37]s,PhA:5.0[4.7-5.4]/4.5[4.1-4.7]°に有意差を認めた(P<0.05)。罹病期間,安静時痛,股関節外転筋力体重比には有意差を認めなかった。(P>0.05)。多変量解析の結果,術前10m歩行時間(P=0.032,OR:1.19,95%CI[1.02-1.40])およびPhA(P=0.014,OR:0.21,95%CI[0.06–0.72])は,年齢,性別および運動時痛を調整後も術後3か月の歩行能力と独立して関連した。一方,年齢,運動時痛は独立した関連因子ではなかった。多重ロジスティック回帰モデルのNagelkerke R²は0.46であり,VIFはすべて2未満であった。
【考察】
本研究では術前10m歩行時間およびPhAが,年齢,性別および動作時痛を調整後も術後3か月の歩行能力と独立して関連した。歩行速度は筋力やバランス能力,疼痛など複数の身体機能を反映する指標であり,術前の身体機能の差が術後歩行能力に影響した可能性が考えられる。また,PhAは細胞膜機能や筋質,栄養状態を反映する指標であり,術後歩行能力の回復に寄与する可能性が考えられた。