講演情報

[16]膝前十字靭帯損傷患者における下肢筋発揮率と位相角の特徴

*久保 力輝1、小田 翔太1、林 祥宏1、東根 風志1、細田 里南1 (1. 高知大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

キーワード:

膝前十字靭帯損傷、筋発揮率、位相角

【はじめに,目的】
膝前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)損傷患者では,大腿四頭筋の筋萎縮や最大筋力の低下が高頻度に認められ,これら量的因子に着目した報告が多い。近年,質的因子である筋力発揮率(Rate of Force Development:RFD)や位相角(Phase Angle:PhA)が注目されている。しかし,ACL損傷患者における術前のRFDやPhAの特徴については十分に明らかでない。本研究の目的は,ACL損傷患者術前の筋力,RFDおよびPhAの特徴を明らかにすることである。
【方法】
対象は膝ACL損傷に対して当院で関節鏡視下前十字靭帯再建術を施行した23例(平均年齢21[13 - 45]歳,女性12例)である。術前評価として,等尺性筋力測定機器を使用して,両側の等尺性膝関節伸展筋力(筋力)を測定した。RFDは,測定データの筋力-時間曲線から過去の報告を参考に,最大筋力の20%を超えた地点を基準(0msec)とし,0–100 msecの区間の筋力変化の平均勾配を求めた。筋力およびRFDは体重で除し補正した。PhAの測定には体組成計を用いて両側下肢の値を記録した。また,得られた各データの患健比(Linb symmetry index: LSI)を算出した。各評価項目の健側・患側の比較にはWilcoxon符号付順位検定を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
学会発表の主旨や個人情報の保護について対象者には十分な説明を行い,同意を得て行った。
【結果】
筋力体重比(中央値[四分位範囲],健/患側):0.59[0.51-0.69]/0.52[0.44-0.59]kgf/kg、RFD:3.26[2.13-6.05]/2.33[1.79-4.43]kgf/ kg/msec、PhA:6.44±0.93/6.21±0.88°であり、すべての項目で患側が健側と比べて有意に低値であった(P<.05)。LSIは筋力体重比:91.6[76.9-97.6]%、RFD:70.0[44.6-117]%,PhA:96.2[93.8-98.5]%と、RFDのLSIが大きかった。
【考察】
RFDは運動単位の発火頻度などの神経学的要因との関連が強いことが報告されている。また,PhAは細胞膜機能や細胞の健常性を反映する筋質指標として注目されており,高い身体機能や競技パフォーマンスと関連することが報告されている。ACL損傷患者では,疼痛や関節腫脹,関節由来の求心性入力の変化などに起因する関節因性筋抑制によって大腿四頭筋の神経筋機能が低下することが知られている。本研究において患側で筋力,RFDおよびPhAがいずれも低値を示したことから,ACL損傷後には筋量低下のみならず,神経筋機能および筋質の低下が生じていることが示唆された。