講演情報

[58]2型糖尿病における位相角と関連する因子の特徴

*小松 康平1、東根 風志1、小田 翔太1、細田 里南1 (1. 高知大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

キーワード:

2型糖尿病、位相角、心不全

【はじめに、目的】
位相角(Phase angle;PhA)は、生体電気インピーダンス法から得られる指標であり、様々な疾患において有用な評価指標であると報告されている。整形外科疾患患者ではPhAと身体機能との関連が報告されている一方で、心不全患者では異なる関連性が報告されており、PhAの臨床的意義は疾患によって異なる可能性がある。2型糖尿病患者では、骨格筋量や身体機能の低下に加え、心不全などの全身性の病態がPhAに影響を及ぼす可能性がある。しかし、これらを包括的に検討した報告は少ない。本研究の目的は、2型糖尿病患者におけるPhAの関連因子を明らかにすることである。
【方法】
対象は、教育入院目的に入院した2型糖尿病患者127例(平均年齢64[40-86]歳、男性82例)である。研究デザインは後方視的観察研究であり、診療録から年齢、性別、心不全の有無、糖尿病罹病期間、HbA1c、握力、歩行速度、PhA、骨格筋指数(Skeletal Muscle Mass Index;SMI)を取得した。PhAおよびSMIの測定にはIn Body 770を使用した。統計解析はPhAを目的変数として、年齢、性別、心不全の有無、糖尿病罹病期間、HbA1c、握力、歩行速度およびSMIを説明変数に重回帰分析を実施した。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には研究内容を十分に説明し、同意を得て実施した。
【結果】
重回帰分析の結果、PhAには性別(β=0.226、P=0.008)、心不全の有無(β=−0.136、P=0.021)、および握力(β=0.624、P<0.001)が独立して関連していた(R²=0.648)。一方、年齢、糖尿病罹病期間、HbA1c、SMI、および歩行速度はいずれも有意な関連を認めなかった。
【考察】
握力がPhAと独立して関連していた一方で、骨格筋量の指標であるSMIとは関連を認めなかった。PhAは細胞膜の生理的機能レベルや細胞内外の水分バランスを反映し、近年では筋量よりも筋力などの機能的側面との関連が報告されている。本結果もこれらの報告を支持するものであり、2型糖尿病患者におけるPhAは骨格筋量よりも、筋力との関連が強い可能性がある。また、心不全の併存は、性別、握力、SMIおよび歩行速度などを調整した後もPhAと独立して関連していた。心不全患者では、慢性炎症や酸化ストレスなどを背景として骨格筋の構造的、機能的変化が生じることが報告されている。本研究で認められたPhAとの関連にはこれらの病態に伴う骨格筋の構造的・質的変化や全身状態の変化が反映する可能性が考えられた。そのため、2型糖尿病患者におけるPhAには、糖尿病に伴う筋力低下のみならず、心不全による全身性の病態も影響している可能性があり、筋力および病態を包括的に評価する指標となることが示唆された。