講演情報

[33]災害時を想定した車椅子避難における移動介助トレーニングの試み
~車椅子避難サポーター養成講座の開設~

*柳澤 幸夫1、藤巻 晃2 (1. 徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科、2. 徳島文理大学地域連携センター)

キーワード:

車椅子、避難、移動介助

【はじめに】現在,国内外では地震や風水害など多くの災害が頻発している。国内においては,地域での災害時避難に対する取り組みが行われているが,要配慮者や避難行動要支援者の移動介助への対策は十分ではない。過去に実施した災害時の避難意思調査では,介護度4,5の在宅介護者は61.5%が避難しないと回答された。その理由に移動の介助方法がわからないと回答した者が含まれており,災害時の避難移動介助方法に関する情報および技術を習得する場が必要と考えられた。そこで,我々は2019年に屋内外での車椅子避難移動の介助技術を高めるための講座を開講した。今回,講座の受講者から受講前後の自己効力感の変化など若干の知見が得られたため,報告する。
【方法】対象者は地域在住の健常者180名(40.3±18.9歳)とした。屋内外での車椅子避難移動の介助技術として,水平避難と垂直避難に着目した。水平避難では路上にあるとされる障壁としてグレーチング,砂利,小さな段差,液状化,がれきを設置,水平避難では車椅子ごと持ち上げる方法や引き上げ方法,人だけの移送方法を実施することとした。体験前後のアンケート内容は車椅子の基本知識の有無,車椅子の移動介助経験,避難訓練での車椅子介助経験,各介助方法の困難感,受講前後における車椅子移動介助に関する自己効力感とした。統計解析では各質問は単純集計,自己効力感の変化は対応のあるt検定を用いた。有意水準の判定は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は対象者に研究概要,参加の拒否,撤回,中断などを紙面・口頭にて説明し,同意を得た上で実施した。
【結果】車椅子の基本知識(有/無:42.7/57.3%),車椅子の移動介助経験(有/無:51.4/48.6%),避難訓練での車椅子介助経験(有/無:25.9/74.1%),各介助方法で困難感を認めたのは,垂直避難における車椅子介助(49.7%),車椅子のキャスターアップ方法(45.4%)などが挙げられた。受講前後における車椅子移動介助の自己効力感では,受講後に有意な増加が認められた(p<0.01)。
【考察】調査の結果,車椅子を用いた避難移動の介助講座の受講後に自己効力感が有意に向上したことから,実践的な体験型講座は地域住民の心理的障壁を下げ,災害時の共助意識を高める上で有効であると示唆された。一方で,受講者の約半数が垂直避難やキャスターアップに困難感を示したことは,身体的・技術的課題が明らかとなった。過去の調査で在宅介護者の多くが「介助方法がわからない」ことを理由に避難しないと回答があったことから,今後は本講座のような技術習得の場を各地方で開講し,住民の誰もが災害時の状況に応じた介助方法を選択,実践できるように広めていくことが,地域の防災力向上において重要と考える。