講演情報
[52]脳卒中片麻痺者における咬合条件の違いが歩行パラメータに及ぼす影響
*木原 幸太1、田上 友希2、小野田 恵理3、小倉 友柄1、瓦谷 拓也1、堀井 結賀1 (1. 伊予病院 リハビリテーション部、2. 畿央大学大学院 健康科学研究科 神経リハビリテーション学研究室、3. Neutral株式会社)
キーワード:
脳卒中片麻痺者、咬合条件、歩行
【はじめに,目的】
本研究の目的は,脳卒中症例を対象に歩行中の咬合条件の違いが,歩行速度を中心とした歩行パラメータに及ぼす影響を明らかにするとともに,咬合支持数および咬合力がその関係を修飾するかを検討することにした.
【方法】
初発の脳卒中片麻痺者32名(67.3±13.0歳,FAC≧3)を対象とした.歩行測定には,足圧分布測定装置を用いて最大速度での歩行を測定した.咬合条件はfree,コットンロールS,Lの3条件とし,順序は無作為化した.各条件で練習1回を行った後に3試行を測定した.評価項目は歩行速度および前後・左右方向の変動性とした.歯科評価として咬合支持数(0~4点)および立位最大咬合力を測定した.統計解析には線形混合モデルを用いて,咬合条件を固定効果,被験者をランダム効果とし,共変量として年齢,性別,SIAS下肢運動項目合計,Berg Balance Scale(BBS),発症から測定までの日数を加えたモデル(Model 1)を構築した.さらに,咬合支持数および咬合力を説明変数として加え,咬合条件と咬合支持数,ならびに咬合条件と咬合力との交互作用項を含むモデル(Model 2)を構築した.条件間比較は推定周辺平均に基づきBonferroni法で行い,有意水準は5%とした.なお,共変量間の多重共線性については分散拡大係数を用いて,多重共線性がないことを確認した.統計解析にはEZR version 1.67を使用した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院の倫理審査委員会にて承認され(承認番号:2026-6)その後,ヘルシンキ宣言に基づき,研究参加に対する自由意志と権利の確認,個人情報保護に対する配慮を十分に説明し同意を得た.なお,測定中は理学療法士による監視を常に行い安全性には最大限の配慮を行った.
【結果】
Model 1では咬合条件はすべての歩行指標において有意な主効果を示した.L条件はfree条件と比較して歩行速度の増加および前後・左右方向の変動性の低下を認めた(p<0.01).また,SIAS下肢機能およびBBSは歩行速度と有意に関連した(p<0.05).一方,Model 2では咬合条件と咬合支持数・咬合力との交互作用はいずれの指標においても有意ではなく,歩行速度における咬合条件の主効果は消失した.一方,前後および左右方向の変動性においてL条件ではfree条件と比較して有意な低下を示した(p<0.01).
【考察】
本研究より咬合条件の違い,特に咬合高径の増加を伴う条件は,歩行安定性を改善する可能性が示唆された.一方で,歩行速度に対する影響は認めず,その効果は咬合支持数,咬合力といった咬合機能には依存しなかった.これらの結果から,動的な咬合状態の変化は姿勢制御に関与する重要な要因である可能性が示された.
本研究の目的は,脳卒中症例を対象に歩行中の咬合条件の違いが,歩行速度を中心とした歩行パラメータに及ぼす影響を明らかにするとともに,咬合支持数および咬合力がその関係を修飾するかを検討することにした.
【方法】
初発の脳卒中片麻痺者32名(67.3±13.0歳,FAC≧3)を対象とした.歩行測定には,足圧分布測定装置を用いて最大速度での歩行を測定した.咬合条件はfree,コットンロールS,Lの3条件とし,順序は無作為化した.各条件で練習1回を行った後に3試行を測定した.評価項目は歩行速度および前後・左右方向の変動性とした.歯科評価として咬合支持数(0~4点)および立位最大咬合力を測定した.統計解析には線形混合モデルを用いて,咬合条件を固定効果,被験者をランダム効果とし,共変量として年齢,性別,SIAS下肢運動項目合計,Berg Balance Scale(BBS),発症から測定までの日数を加えたモデル(Model 1)を構築した.さらに,咬合支持数および咬合力を説明変数として加え,咬合条件と咬合支持数,ならびに咬合条件と咬合力との交互作用項を含むモデル(Model 2)を構築した.条件間比較は推定周辺平均に基づきBonferroni法で行い,有意水準は5%とした.なお,共変量間の多重共線性については分散拡大係数を用いて,多重共線性がないことを確認した.統計解析にはEZR version 1.67を使用した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院の倫理審査委員会にて承認され(承認番号:2026-6)その後,ヘルシンキ宣言に基づき,研究参加に対する自由意志と権利の確認,個人情報保護に対する配慮を十分に説明し同意を得た.なお,測定中は理学療法士による監視を常に行い安全性には最大限の配慮を行った.
【結果】
Model 1では咬合条件はすべての歩行指標において有意な主効果を示した.L条件はfree条件と比較して歩行速度の増加および前後・左右方向の変動性の低下を認めた(p<0.01).また,SIAS下肢機能およびBBSは歩行速度と有意に関連した(p<0.05).一方,Model 2では咬合条件と咬合支持数・咬合力との交互作用はいずれの指標においても有意ではなく,歩行速度における咬合条件の主効果は消失した.一方,前後および左右方向の変動性においてL条件ではfree条件と比較して有意な低下を示した(p<0.01).
【考察】
本研究より咬合条件の違い,特に咬合高径の増加を伴う条件は,歩行安定性を改善する可能性が示唆された.一方で,歩行速度に対する影響は認めず,その効果は咬合支持数,咬合力といった咬合機能には依存しなかった.これらの結果から,動的な咬合状態の変化は姿勢制御に関与する重要な要因である可能性が示された.
