講演情報
[53]重度左片麻痺患者に対する牽引を用いた起き上がり練習の効果
—シングルケースデザインABAB法による検証—
*﨑山 誠也1、中山 智晴1,2、山﨑 裕司3 (1. 須崎くろしお病院 リハビリテーション部、2. 高知大学医学部 脳神経内科学、3. 高知リハビリテーション専門職大学 理学療法学専攻)
キーワード:
片麻痺、起き上がり、シングルケースデザイン
【はじめに,目的】
重度片麻痺患者の起き上がり練習において、滑車と重錘を用いた体幹牽引介入の有効性が報告されている(中山、2019)。今回、Pusher現象を伴う重度左片麻痺患者に対し、牽引による起き上がり練習を実施し、その効果を検討した。
【方法】
症例は80代女性。脳出血発症翌日に血腫除去術を施行し、28病日に当院へ入院した。介入前(67病日)のBrunnstrom Recovery Stageは上肢Ⅳ、下肢Ⅲ、非麻痺側の徒手筋力検査は上下肢4、深部感覚は重度鈍麻、高次脳機能障害は視覚性失認、半側空間無視を認めた。Scale for contraversive pushing(以下、SCP)は 2/6点であり、Pusher現象を認めた。これまで起き上がり練習は、動作完了肢位から徐々に開始肢位へと近づける逆方向連鎖化の方法(中田、2011)によって介入していたが、ベッド上での起き上がりは、側臥位~on elbow、on handへの移動に中等度介助を要した。研究デザインは、シングルケースデザインABAB法を用いた。逆方向連鎖化介入期をA-1期(62〜67病日)、牽引介入期をB-1期(68〜83病日)、休止期をA-2期(84〜98病日)、再介入期をB-2期(99〜102病日)とした。B-1期の介入では、プラットフォーム上仰臥位を開始肢位とし、側臥位を介して座位までの起き上がりを練習した。オーバーヘッドフレームに設置した滑車にロープを通し、一方を体幹に巻いた介助ベルトに連結した。そして、もう一方には重錘を装着した。牽引量は患者の能力に応じ10kgから段階的に減量した。従属指標は、ベッド上(柵あり)で仰臥位からの起き上がり能力を、FIM基準を応用し、1点(全介助)から5点(監視)の5段階で採点した。なお、この評価は理学療法開始時の離床の際に実施し、すべての期間において同一の条件下で行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に従い実施し、当院倫理委員会の承認を得た(R-8-06)。患者に口頭および書面で説明し同意を得た。
【結果】
起き上がり点数(平均値)は、A-1期2.85点、B-1期は4.0点(後半にかけて上昇傾向)、A-2期3.93点(後半にかけて下降傾向)であった。B-2期には5.0点となり、すべての病日で監視下での起き上がりが可能となった。110病日の最終評価時、運動麻痺や感覚障害に変化はなかった。SCPは1/6点へ改善し、ベッド上からの起き上がり(柵把持)の動作獲得に至った。
【考察】
重錘による牽引は起き上がりに必要な努力量を減少させる。先行研究では、牽引重量を減少させる過程で適正な重心位置や適正な動作パターンを探す行動が観察されている(中山、2020)。本症例においても同様の行動が観察されており、能動的に効率の良い起き上がりパターンを学習できたものと推察された。
重度片麻痺患者の起き上がり練習において、滑車と重錘を用いた体幹牽引介入の有効性が報告されている(中山、2019)。今回、Pusher現象を伴う重度左片麻痺患者に対し、牽引による起き上がり練習を実施し、その効果を検討した。
【方法】
症例は80代女性。脳出血発症翌日に血腫除去術を施行し、28病日に当院へ入院した。介入前(67病日)のBrunnstrom Recovery Stageは上肢Ⅳ、下肢Ⅲ、非麻痺側の徒手筋力検査は上下肢4、深部感覚は重度鈍麻、高次脳機能障害は視覚性失認、半側空間無視を認めた。Scale for contraversive pushing(以下、SCP)は 2/6点であり、Pusher現象を認めた。これまで起き上がり練習は、動作完了肢位から徐々に開始肢位へと近づける逆方向連鎖化の方法(中田、2011)によって介入していたが、ベッド上での起き上がりは、側臥位~on elbow、on handへの移動に中等度介助を要した。研究デザインは、シングルケースデザインABAB法を用いた。逆方向連鎖化介入期をA-1期(62〜67病日)、牽引介入期をB-1期(68〜83病日)、休止期をA-2期(84〜98病日)、再介入期をB-2期(99〜102病日)とした。B-1期の介入では、プラットフォーム上仰臥位を開始肢位とし、側臥位を介して座位までの起き上がりを練習した。オーバーヘッドフレームに設置した滑車にロープを通し、一方を体幹に巻いた介助ベルトに連結した。そして、もう一方には重錘を装着した。牽引量は患者の能力に応じ10kgから段階的に減量した。従属指標は、ベッド上(柵あり)で仰臥位からの起き上がり能力を、FIM基準を応用し、1点(全介助)から5点(監視)の5段階で採点した。なお、この評価は理学療法開始時の離床の際に実施し、すべての期間において同一の条件下で行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に従い実施し、当院倫理委員会の承認を得た(R-8-06)。患者に口頭および書面で説明し同意を得た。
【結果】
起き上がり点数(平均値)は、A-1期2.85点、B-1期は4.0点(後半にかけて上昇傾向)、A-2期3.93点(後半にかけて下降傾向)であった。B-2期には5.0点となり、すべての病日で監視下での起き上がりが可能となった。110病日の最終評価時、運動麻痺や感覚障害に変化はなかった。SCPは1/6点へ改善し、ベッド上からの起き上がり(柵把持)の動作獲得に至った。
【考察】
重錘による牽引は起き上がりに必要な努力量を減少させる。先行研究では、牽引重量を減少させる過程で適正な重心位置や適正な動作パターンを探す行動が観察されている(中山、2020)。本症例においても同様の行動が観察されており、能動的に効率の良い起き上がりパターンを学習できたものと推察された。
