講演情報

[PS-01]オンライン技術を駆使し、多様な事前事後活動を行う短期海外プログラム

*瀬尾 匡輝1 (1. 茨城大学)
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キーワード:

短期海外プログラム、ベトナム、事前・事後学習、日本語教育実習

海外での短期研修を単に「いってよかった」という「ハネムーン効果」(藤田 2017)で終わらせないためにも、派遣前後の指導・学習は大切である。Bathurst & La Brack(2012)も事前事後にプログラムを提供する側が入念に計画した介入をすることで、参加者の学びを最大化することができると指摘している。また、河合塾(2018)の調査によると、事前学習などの教育支援が整っているプログラムほど参加学生の満足度が高いことも明らかになっている。本発表では、海外の日本語教育への理解を促す1ヵ月のベトナムでの短期海外プログラムの事前・事後学習を報告し、よりよい学びへとつながるオンライン技術を駆使した事前・事後学習について参加者と議論したい。
 本発表で報告する短期海外プログラムでは、日本語教員養成プログラムを履修する学生3名をベトナムに2024年の春期休暇に約1ヵ月間派遣した。派遣先で、学生は①派遣先大学及び市内の小学校、中学校、高校、語学学校の授業見学及びそれらの機関での教育活動、②日本語学習者及び教員との交流、③日本文化紹介活動の企画・運営、④毎日行われる活動のふりかえりを通して、ベトナムの日本語教育に対する理解を試みた。また、ベトナムの日本語教師と日本語教育が置かれる課題と解決策を検討することも行った。
 事前学習として、①夏季休暇に派遣先大学と協力したCOIL授業の開講、②「日本語教授法」の授業で派遣先大学の学生と協力して、現地の小学生及び中学生に向けたオンライン上の教育活動の実施、③ベトナムの学生とペアになり、互いの言語や文化をオンライン上で学ぶEタンデム学習を行った。 
 事後学習として、①ベトナムでのニーズ・レディネス調査をもとに、派遣先の学生に向けたオンライン短期日本語・日本文化研修プログラムの企画・運営(具体的には、子どもの日を題材にした文化紹介活動、昔話を題材とした日本語授業、茨城県立歴史館からの生配信)、②次年度に派遣する事前学習用のベトナム語教材の開発を行った。
 分析では、参加学生3名へのアンケート及びインタビューの結果をもとに議論をする。事前学習は、教養科目及び日本語教員養成科目で行われ、学生達は活動への参加を通して、ベトナムやベトナムの日本語教育への興味関心を高めるのにつながっていた。そして、それらの経験を通してベトナムについての事前知識をある程度得ることができ、現地での活動を通してそれらの知見をさらに深め、現地での教育活動もスムーズに行うことができていた。また、事後学習の派遣先の学生に向けたオンライン短期日本語・日本文化研修プログラムでは、かれらの興味関心に基づいたプログラムを企画し、事前学習用のベトナム語教材の開発では自らの経験に基づき教材を作成し、自らの経験が現地の学生や次年度派遣される学生の役に立っていることに喜びを抱いていた。