講演情報

[PS-02]多文化交流ラウンジ「ここあ」における取り組みと今後に向けて

*深谷 麻未1、*矢島 清香1 (1. 名古屋大学)
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キーワード:

多文化交流、留学生支援、ウェルネス、居場所づくり、異文化適応

留学生は、日常生活・学業において一般学生が抱える課題に加え、外国語の習得や異文化適応などさらに多くの課題を抱える傾向にある。また、言語の壁や日本でのネットワークの少なさなどからアクセスできるサポート資源も限られるうえ、自身の背景やアイデンティティを共有しづらく、分かり合える機会が少ない。そのため、悩みや困難に直面した際のストレスが長期化しやすいことが推測される。
 このような背景から、留学生が自分の心身に向き合い、セルフケアやリラックス方法を学ぶ機会を提供するとともに、参加学生同士の共修・交流を通して互いに励まし合えるネットワークを構築する機会の提供を目的に、2024年度秋学期に多文化交流ラウンジ「ここあ」を立ち上げた。本発表では、「ここあ」での取り組みを報告するとともに、今後の実践の課題や可能性について参加者と議論を行いたい。
 本プログラムは、学期期間中に週1度のペースで、主に留学生を対象とした心身の健康増進をテーマとしたセッションを実施した。具体的には、瞑想セッションやアートワークショップ(折り紙や年賀状作成)、少人数対話セッション、ヨガセッションなどに加え、タイムマネジメントやプランニングを含む学修支援のセッションも行った。いずれのセッションも主な使用言語は英語とし、適宜日本語も織り交ぜながら進めた。
 全体の参加者数は延べ60名で、そのうち留学生が57名を占めた。また、参加者の約6割(36名)が大学院生・研究生であり、特に英語基準プログラムの学生が複数回にわたり参加していたことが確認された。これらの学生は日常生活の中でネットワークを広げることが難しいことが伺え、参加者の声からも、本プログラムが彼らにとって心の拠り所となる場であった可能性が考えられる。
 学部生向けのプログラムが多く展開される一方で、本学の留学生の6割以上を大学院生が占めている。「ここあ」はそのような大学院留学生にとってリラックスした空間を創出し、学習・研究に向かうためのセルフケア・リラックスする場の提供に寄与することができたと考えられる。今後は、大学院生も安心して過ごせる居場所や参加できるコミュニティの機会をさらに充実させることが求められる。