講演情報
[SS-8-01]文系外国人留学生の長期インターンシップ実施手法と課題
*栗原 由加1、*香月 裕介1 (1. 神戸学院大学)
キーワード:
外国人留学生、長期インターンシップ、文系
1.背景と目的
外国人留学生(以下、留学生)の教育において「日本国内での就職と定着」は重要な課題であり、内閣府による『日本再興戦略2016』でも、大学による中長期インターンシップを含む教育プログラムの推進が提示されている。しかし、留学生のインターンシップ実施には、留学生の日本語力不足や日本企業文化への不慣れに加え、企業側の受け入れ負担の大きさという問題があり、特に文系留学生においてはマッチングや実施のハードルが高く、インターンシップの受け入れが進みにくいという現状がある。本発表では、神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部日本語コースでの8年間の実績に基づき、文系留学生の長期インターンシップの実施手法、教育効果、課題を報告し、文系留学生のインターンシップの在り方を検討する。
2.実施事例(2024年度)
3年次在籍の留学生17名(N1:5名、N2:12名)が参加し、18日間(2024年6月25日~8月7日)、6か所で実施した。実施形態は、テレワーク、対面でのチームワーク、週1回程度の面談(オンライン/対面併用)の三形態の組み合わせである。実施内容は、企業が外国人社員採用に活用できる紹介動画(多言語対応)の制作である。
3.実施手法のポイント
(1)業務内容
文系留学生が主体的に業務遂行できるプロジェクト課題とする。
(2)スケジュール(作業工程)の組み方
業務全体を2~5日単位の小規模なユニットに分割し、それらを組み合わせるモジュール方式で、柔軟に作業工程を設計する。
(3)指導分担、評価方法
教員とインターンシップ先企業との指導と評価の分担を明確にし、情報を共有する。
(4)インターンシップ先確保
企業側の負担が軽減されることで、新規インターンシップ先確保が容易になる。
4.教育効果
(1)日本語力
企業と協力して業務を進めるための実践的な日本語能力が向上する。また、プロジェクト(企業紹介動画の制作)を通じて、業務で使用されている専門的な語彙を習得できる。
(2)業務遂行力
スケジュール管理、健康管理、時間管理、役割分担、報連相、ITリテラシー等、業務を行う上で必要なスキルを総合的に身につけることができる。
(3)ビジネスマナー
企業とのやりとりや訪問を通じて、時間厳守、あいさつ、礼儀など、社会人として求められる基本的なマナーや態度を身につけることができる。
5.結論、課題
本手法は、企業と留学生の双方にインターンシップ参加の機会を広く提供するという点で、現実的かつ有効なアプローチである。ただし、本手法でのインターンシップを実施するためには、大学側に教育および業務管理に関する実務が発生し、それに対応できる専門的な知見や運営体制が必要となる。本手法を汎用化し、より多くの教育機関や関係者が活用できる形へと発展させていくためには、多くの企業や教育現場から情報や知見を収集し、より実施しやすい運用方法を工夫・検討していくことが、今後の課題である。
外国人留学生(以下、留学生)の教育において「日本国内での就職と定着」は重要な課題であり、内閣府による『日本再興戦略2016』でも、大学による中長期インターンシップを含む教育プログラムの推進が提示されている。しかし、留学生のインターンシップ実施には、留学生の日本語力不足や日本企業文化への不慣れに加え、企業側の受け入れ負担の大きさという問題があり、特に文系留学生においてはマッチングや実施のハードルが高く、インターンシップの受け入れが進みにくいという現状がある。本発表では、神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部日本語コースでの8年間の実績に基づき、文系留学生の長期インターンシップの実施手法、教育効果、課題を報告し、文系留学生のインターンシップの在り方を検討する。
2.実施事例(2024年度)
3年次在籍の留学生17名(N1:5名、N2:12名)が参加し、18日間(2024年6月25日~8月7日)、6か所で実施した。実施形態は、テレワーク、対面でのチームワーク、週1回程度の面談(オンライン/対面併用)の三形態の組み合わせである。実施内容は、企業が外国人社員採用に活用できる紹介動画(多言語対応)の制作である。
3.実施手法のポイント
(1)業務内容
文系留学生が主体的に業務遂行できるプロジェクト課題とする。
(2)スケジュール(作業工程)の組み方
業務全体を2~5日単位の小規模なユニットに分割し、それらを組み合わせるモジュール方式で、柔軟に作業工程を設計する。
(3)指導分担、評価方法
教員とインターンシップ先企業との指導と評価の分担を明確にし、情報を共有する。
(4)インターンシップ先確保
企業側の負担が軽減されることで、新規インターンシップ先確保が容易になる。
4.教育効果
(1)日本語力
企業と協力して業務を進めるための実践的な日本語能力が向上する。また、プロジェクト(企業紹介動画の制作)を通じて、業務で使用されている専門的な語彙を習得できる。
(2)業務遂行力
スケジュール管理、健康管理、時間管理、役割分担、報連相、ITリテラシー等、業務を行う上で必要なスキルを総合的に身につけることができる。
(3)ビジネスマナー
企業とのやりとりや訪問を通じて、時間厳守、あいさつ、礼儀など、社会人として求められる基本的なマナーや態度を身につけることができる。
5.結論、課題
本手法は、企業と留学生の双方にインターンシップ参加の機会を広く提供するという点で、現実的かつ有効なアプローチである。ただし、本手法でのインターンシップを実施するためには、大学側に教育および業務管理に関する実務が発生し、それに対応できる専門的な知見や運営体制が必要となる。本手法を汎用化し、より多くの教育機関や関係者が活用できる形へと発展させていくためには、多くの企業や教育現場から情報や知見を収集し、より実施しやすい運用方法を工夫・検討していくことが、今後の課題である。