講演情報

[WS-C-01]国際寮ワークショップ~寮の課題と学生の気づきを促す工夫を学び合う~

*吉田 千春1、*力丸 晃也2 (1. 中央大学、2. 立命館アジア太平洋大学)
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キーワード:

国際寮、異文化理解

近年、大学の国際化の進展に伴い、留学生と日本人学生が共に生活する国際寮(宿舎を含む)の設置が各地で進められています。国際寮は、単なる生活のための居住空間としての役割にとどまらず、「寮内留学」や「グローバル人材の育成」といった側面からも、教室外での学びや成長の場としての機能が期待されています。こうした背景を受けて、ユニット型の居室や充実した共有スペースを設けるなど、寮生同士の交流を促進するための様々な工夫が取り入れられています。
 一方で、多様な言語や文化的背景を持つ学生が共に生活を送る中で、日常の些細な行き違いや価値観の衝突といった共生の難しさが表面化することも少なくありません。こうした寮内で起こる様々な問題や葛藤を、学生自身が自分ごととして捉え直し、相互の立場に目を向けながら関係を築いていくためには、寮内での対話や学びの機会を意識的に設けることや、寮の運営に携わるスタッフの育成、そして寮担当者同士の情報共有とネットワーク形成の場の整備が喫緊の課題であると考えられます。
 このような問題意識のもと、発表者の2名は2019年以降に開設された複数の大学の国際寮を視察し、現場で実際に生じている課題や、導入されている教育プログラムについて調査を行いました。その成果をもとに、国際寮の運営に携わる関係者が広く活用できることを目指して、「国際寮ワークブック」を作成しました。
 このワークブックには、主に2つの特徴があります。第1に、入寮から退寮までのプロセスを理論的に整理し、異文化適応の視点から寮での経験を客観的に考えることができるように構成されています。第2に、寮で実際に起きた事例をもとに、問題に対する多様な捉え方や対応について、対話を通して考えることで、学生の柔軟な視点や自己理解・他者理解を深めることを目指しています。
 本ワークショップでは、この「国際寮ワークブック」を活用し、参加者同士の意見交換を通じて、寮運営における課題や悩みを共有しながら、寮における課題解決や、寮生の学びを支える工夫につながるアイデアを共に検討することを目的としています。
ワークショップでは、以下の3つの活動を予定しています。
1.各大学・機関における寮の概要や取り組みを共有し、寮運営の現場で直面している課題や工夫について意見交換を行います。
2.「国際寮ワークブック」の作成の意図や活用方法について説明し、実際にワークの一部を体験しながら理解を深めます。
3.寮内の問題への対応や、学生リーダー(Resident Assistantなど)の育成に向けた研修内容のあり方について、各自の寮での実践に活かせる具体的アイデアを検討します。

※「国際寮ワークブック」はJSPS 科研費JP20K14037の助成を受けて作成されたものです。