講演情報

[SS-8-01]動機づけを促進するオンラインタンデム学習支援システムの開発〜心理学的アプローチと生成AIの実践〜

*松木 敦志1 (1. 立教大学)

キーワード:

オンラインタンデム学習、自己調整学習、生成AI、動機づけ設計、学習支援システム、Virtual Exchange(VE)

受講者に求められる 事前の知識・経験等
プログラミング知識やシステム開発の経験は一切不要です。また、心理学的な用語もできる限り平易な表現で説明いたしますので、心理学の専門知識も不要です。



オンライン学習のモチベーション維持や学習の質保証を目的として、心理学的なアプローチを用いて非エンジニアが生成AIで作成したシステムを共有します。このシステム開発の経験を通して生成AIによる学習システム開発の展望について説明します。また、実際、どの様な手順でシステムを構築したのかデモンストレーションを行い、現場で活用できるようなセッションといたします。



特に以下に該当する方の参加をお待ちしております。



(1)生成AIを用いて業務用のアプリケーション構築をしたい方

(2)オンラインタンデム学習に関心をお持ちの方

(3)オンライン学習のモチベーション維持に興味のある方

(4)教育システム構築に関心のある方

(5)規模の小さいプログラムのため予算を確保できないとお悩みの方

(6)プログラムに取り組むことで業務負荷が増すため、プログラム導入を躊躇されている方



<注意点>

*今回説明するシステム構築は、主にGoogle for Workspaceでの実践となりますが、それ以外の方にも参考となる内容です。

*高度なシステム構築のセッションではないため、すでに生成AIを用いてシステム構築の実践が多数ある方には、システム構築のデモンストレーションは不向きですのでご注意ください。

受講者が受講前に取り組む 事前課題等
当日、身近な課題で解決したい問題についてアンケートを取ります。回答の中から、その場で速やかに対応できそうな課題があれば、デモンストレーションの時間で、生成AIによるウェブアプリケーションを作成を実践いたしますので、身近な課題をお持ち寄りください

概要
1.はじめに
本発表では、学習者の「動機づけ」を維持・促進するための心理学的知見を基盤とし、生成AIを用いて開発したオンラインタンデム学習支援システムの実践と展望を報告する。非エンジニアである発表者が、いかにして心理学の理論をシステム要件へと落とし込んだのか、実際のプロンプト構築の過程等も共有し、実践的なヒントを提供する。なお、オンラインタンデムの取り組みは文部科学省「大学の世界展開力強化事業」採択のThe ACEコンソーシアムの一環であるACE eTandem Programである。
本学では、2025年10月よりソウル大学校との間でオンラインタンデムのパイロットプログラムを開始した。オンライン学習の継続のため、Muljana & Luo (2019) は「モチベーション」と「自己調整学習能力」の重要性を意識した。

2.オンライン学習記録ノートの概要
自己調整学習のサイクルにおいて、リフレクションで成果や課題を自己評価することは、次なる学習への自律性と継続意欲を高めるとされる(Zimmerman, 2002)。そこで心理学的アプローチを取り入れ、生成AIにより以下の学習支援のための「オンライン学習記録ノート(以下、ノート)」を構築した。

相互支援機能:パートナーの記録閲覧・フィードバック。互恵性による関係性の欲求を満たし、意欲維持を狙う。
自己成長機能:活動ポイントをスキルに配分し、成長を可視化することで有能感を刺激し、学習エンゲージメントを高める。
AI提案機能:AIにトピックを相談できる仕組みを整え、話題枯渇による心理的負荷を下げる。

3.結果とコスト評価
パイロット版(2組4名、4か月)では各組10回以上の学習が継続された。当初スプレッドシートに記録する運用では利用が停滞したが、ノート導入後に利用率が回復した。質問紙では回答者全員がノートを肯定的に評価し、「パートナーへのフィードバックがモチベーションになった」と回答。システムは外注時約4カ月、400万円が見積もられたが、生成AIによって約2カ月、AI利用料(合計月額2,500円程度)に抑えられ、高い費用対効果が実証された。

4.今後の展開
タンデム学習は構造上、利用希望者増が運営側の負担増に直結するためマッチングアプリおよびオリウェンテーション動画を生成AIを用いて作成中である。利用者を協定校の学生に絞ることで利用者の質を担保し、管理負荷を軽減する。協定校経由で学生にURLを頒布するだけで、「マッチング、オリエンテーション、ノートでの学習記録、終了後アンケート」が完結するエコシステム確立と、学習記録に応じてデジタルバッジ発行を事務局が行う仕組みを構想している。

5.本発表の形式と参加者との対話
本発表では、実際に開発した複数のシステムのデモンストレーションや、参加者と共に「AIへの指示文(プロンプト)」を考えるミニワークショップの時間を設ける。他大学の実務者と具体的な意見交換を行い、参加者がそれぞれの現場に持ち帰って応用できる実践的なセッションとする。