講演情報
[A-12-08]「仮想将来世代」として振る舞う生成AIによる環境倫理の変容と技術・倫理の接続
◎丸山 雅貴1,2 (1. 日本国際学園大、2. 地球研)
キーワード:
フューチャー・デザイン、仮想将来世代、生成AI、環境倫理、総合地球環境学、超学際研究
気候変動や生物多様性の喪失をはじめとする人新世の複合的な環境問題は,自然科学的な知識の普及だけでは解決し得ない,社会的合意形成の困難を内包している.従来の民主的な意思決定のプロセスは現世代の利害調整を前提としており,将来世代が被る影響は意思決定の外部性として扱われることがあった.こうした課題に対し,フューチャー・デザインは,参加者が,「仮想将来世代」としての視点を採用するロールプレイングにより,現世代中心の思考から脱却し長期的視点を獲得できることを示してきた.しかし,将来の価値観や生態系等の状況を具体的に想像するための高い認知的負荷が伴い,実践の質がファシリテータの技量や参加者の個人的想像力に大きく依存するという,スケーラビリティ上の制約が存在した.そこで,本研究では,フューチャー・デザインの制約を克服する手段として,生成AIを位置づけ,AIが科学的根拠に基づく「仮想将来世代」を演じる新たな手法を開発し,検証する取組に関して報告する.対象地域の環境計画等を検索拡張生成として参照させた大規模言語モデルにより,「仮想将来世代」として振る舞う生成AIの技術を構築し,この生成AIを用いたロールプレイングを通じて得られたデータへアーギュメント・マイニングを適用することで,AIによる介入の前後における環境倫理の変容を定量的に捉える.その中で,技術的構築にとどまらず,こうした技術が社会的合意形成の場に実装される際に生じる,技術と社会・倫理の接続にかかる論点を中心に論じる.AIが,人間の認知や判断にどこまで介入してよいかという論点をはじめ,AIを正解の提示者ではなく感情を伴ったフィードバックを通じて当事者意識を喚起する存在として位置づける本研究の設計が持つ意義について検討し,AIが思考を代替するのではなく,拡張する可能性を問う事例研究としての位置づけを示す.
