講演情報

[O10-2]脊髄性筋萎縮症(SMA)の病型とSMN2遺伝子コピー数に関する検討-SMA新生児スクリーニングにおける「4コピー問題」に関連して-

横村 守1, 加藤 環1, 伊藤 万由里1, 荒川 玲子1,2, 浦野 真理1, 齋藤 加代子1 (1.東京女子医科大学 ゲノム診療科, 2.国立国際医療研究センター病院 臨床ゲノム科)
緒言:近年、3種のSMA疾患修飾治療薬が薬事承認された。発症前治療は発症後治療に比べ有効性と安全性が高く、新生児スクリーニングによる未発症児の診断・早期治療が重要となった。一方、未発症児のSMN2が4コピー以上の場合直ちに治療介入すべきか否かは議論が分かれる。Caluchoらのcohort調査で4コピー以上持つI、II型の存在が報告された(Neuromuscul Disord 2018;28:208-215)。しかし4コピー群の発症年齢に関連する報告はない。我々はSMN2が4コピーの場合、成人発症で軽症との判断の適否を検証するために自施設で実施した遺伝学的検査結果と臨床について解析した。
対象・方法:1994年から2021年に実施した遺伝学的検査によりSMN1exon7ホモ接合性欠失にてSMAと診断した249症例を対象とし、(1)SMN2exon7のコピー数別病型分類、(2)コピー数別発症年齢を検討した。
結果:(1)SMN2コピー数別病型:1コピーは4例、全例0型であった。2コピー108例、0型10例(9%)、I型63例(58%)、II型30例(28%)、III型5例(5%)、3コピー104例、I型16例(15%)、II型56例(54%)、III型32例(31%)であった。4コピー33例、II型2例(6%)、III型26例(79%)、IV型5例(15%)であった。(2)SMN2コピー数別発症年齢:1コピー4例及び2コピー108例は2歳までに全例発症、3コピー104例は15歳までに全例が発症であった。4コピーでは2歳までに9例(27%)、15歳までに27例(82%)が発症し、成人発症は4例(12%)であった。
考察:SMN2が4コピーでも27%が2歳以前の発症であった。さらに80%以上が15歳以前の発症であり成人発症のIV型は12%であった。4コピー症例は一般に成人期以降の発症と認識されているが、本結果から82%は小児期発症、うち27%は2歳までの発症であった。さらに6%はII型でありCaluchoらの調査と近似した。以上よりSMN2が4コピーの場合に未発症における早期治療の機会を提供すべき症例が多く存在することが証明された。