講演情報

[O11-1]体細胞分裂での不分離による父性片親性ダイソミーのAngelman症候群の一例

藤本 真徳1, 中村 勇治1, 岩城 利彦1, 佐藤 恵美1, 家田 大輔1, 服部 文子1, 白木 杏奈2,3, 水野 誠司4, 齋藤 伸治1 (1.名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学分野, 2.豊田市こども発達センターのぞみ診療所 小児神経科, 3.名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学, 4.愛知県医療療育総合センター中央病院 遺伝診療科)
Angelman症候群(AS)は重度の精神運動発達遅滞を示す疾患であり、UBE3A遺伝子の機能喪失が原因となる。UBE3Aはインプリンティング領域15q11-q13に存在し、父由来アレルが不活化され、母由来アレルのみが発現している。ASの約5%は15番染色体の父性片親性ダイソミー(UPD)が原因であることが知られている。ASにおけるUPDの成因は、多くが卵子形成過程の減数分裂の異常に伴うモノソミーレスキューであり、一部が精子形成過程の減数分裂の異常に伴うトリソミーレスキューであると考えられている。今回、我々は減数分裂の異常によらない受精後の体細胞分裂での不分離による父性UPDを明確に示したため報告する。症例は6歳の男児で精神運動発達遅滞とASの身体的特徴を示した。DNAメチル化検査では15q11-13領域に父親由来のバンドに加えて、わずかに母由来のバンドを認め、モザイク状態であることを示した。FISHは陰性であり、患者、両親の血液を使用した15番染色体の多型解析にて父性UPDを示唆する結果に加え、わずかに母由来のアレルが存在することを示し、両親由来の細胞が少量存在することを確認した。マイクロアレイ染色体検査では15番染色体全体がコピー数の変化のないLOHであり、イソダイソミーに一致する所見であった。これらの結果から本症例は配偶子形成過程の不分離ではなく、受精後の体細胞分裂での不分離に由来する父性UPDであると考えた。ASでのイソダイソミーUPDは必ずしも減数分裂での不分離でなく、受精後の体細胞分裂での不分離が原因である可能性がある。