講演情報
[O11-2]両親性間葉性異形成胎盤におけるインプリントDMRのメチル化異常
○副島 英伸1, 青木 早織1,2, 東元 健1, 三嶋 博之3, 吉浦 孝一郎3, 中林 一彦4, 秦 健一郎4, 原 聡史1, 大場 隆2, 片渕 秀隆2 (1.佐賀大学医学部分子生命科学講座分子遺伝学・エピジェネティクス分野, 2.熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学講座, 3.長崎大学原爆後障害医療研究所人類遺伝学, 4.国立成育医療研究センター研究所周産期病態研究部)
目的:間葉性異形成胎盤(Placental mesenchymal dysplasia:PMD)は、胞状奇胎と類似した嚢胞状変化を呈するが、トロホブラストの異常増殖を認めない形態異常である。多くがandrogenetic/biparentalモザイク(ABM)を示すこと、インプリンティング疾患であるBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)を合併する場合があることから、インプリンティング異常の関与が推測されている。一方、両親性ゲノムを持つ両親性PMDも報告されているが、その頻度や原因は明らかでない。方法・結果:26例のPMD胎盤から肉眼的に正常な19検体と肉眼的にPMDを示す25検体を採取し、DNAマイクロアレイあるいはshort tandem repeat解析でgenotypingを行ったところ、肉眼的PMD検体の約35%が両親性であった。胎盤特異的インプリントDMR15ヶ所とユビキタスインプリントDMR36ヶ所のbisulfite pyrosequencing解析では、両親性PMDで7ヶ所の盤特異的DMRが高頻度に低メチル化していることが明らかとなった。関連するインプリント遺伝子は、両アレル発現していた。また、GRB10を含む5ヶ所のユビキタスDMRも高頻度に低メチル化を示したが、ICR1とICR2は含まれていなかった。4例の両親性PMDについて全エクソーム解析を行ったが、病的バリアントを見いだせなかった。一方、出生した児のうちBWSを4例認めたが、その発症原因はそれぞれ異なっていた。結論:両親性PMDの発症にはインプリントDMRの低メチル化(特に胎盤特異的DMRとユビキタスなGRB10)が関与していることが示唆された。また、BWSとPMDの分子遺伝学的解析結果が必ずしも同一でないことから、異なる起源の細胞から発症すると思われた。