講演情報

[O11-3]中枢性思春期早発症患者70症例の遺伝学的解析

成澤 宏宗1,2, 長崎 啓祐3, 矢ヶ崎 英晃2, 内木 康博4, 佐野 伸一朗5, 齋藤 朋洋6, 曽根田 瞬7, 寺下 新太郎8, 金城 さおり9, 儘田 光和10, 伊達木 澄人11, 鳴海 覚志1, 堀川 玲子4, 緒方 勤12, 深見 真紀1, 鏡 雅代1 (1.国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部, 2.山梨大学 小児科, 3.新潟大学医歯学総合病院 小児科, 4.国立成育医療研究センター 内分泌代謝科, 5.静岡県立こども病院 糖尿病・代謝内科, 6.山梨県立中央病院 小児科, 7.たなか成長クリニック, 8.富山大学 医学部 小児科, 9.沖縄県立中部病院 小児科, 10.丹後中央病院 小児科, 11.長崎大学病院 小児科, 12.浜松医療センター 小児科)
【背景】遺伝性の中枢性思春期早発症(CPP)の原因遺伝子としてKISS1KISS1RPROKR2、父性発現インプリンティング遺伝子のMKRN3、DLK1が同定されている。インプリンティング疾患(IDs)のTemple症候群(TS14)、Silver-Russell症候群もCPPを発症しうる。しかしCPP症例に対するエピゲノム異常を含む包括的な遺伝学的解析は報告されていない。【目的】CPPにおける遺伝学的異常の寄与と原因別臨床的特徴を明らかにする。【方法】小児内分泌専門医によりCPPと臨床診断された70症例(男性17名、女性53名)を対象とした。パイロシークエンス法によるメチル化解析で既知のIDsをスクリーニングし、陽性例に対しマイクロサテライトマーカー解析、aCGH解析またはMS-MLPA解析を施行し、遺伝学的原因を確定した。陰性例では次世代シーケンサーによるKISS1KISS1RPROKR2DLK1MKRN3の変異解析、MKRN3:TSS-DMRのメチル化解析を行った。同定したDLK1MKRN3のvariantや欠失の親由来は、家族解析、メチル化制限酵素を用いたサンガーシーケンスで確認した。【結果】70症例中7症例がTS14と遺伝子診断された。SGA出生の9例のうち6例がTS14であった。MKRN3の欠失を1例で、新規レアバリアントp.C335Yを1例で同定した。共にバリアントは父由来アレルに存在した。これら2例は特徴的な臨床像を認めなかったが、詳細な病歴聴取の結果、父親にCPPと推測される経過があった。【考察】TS14が高頻度に同定された。特にSGAを伴うCPPにおけるTS14の寄与が現在の認識よりも高いと推測された。一方で、当研究室がIDsを扱うことを考慮すると、この結果は選択バイアスの影響を受けている可能性がある。父性発現遺伝子であるMKRN3の異常を発端者の臨床像のみから推定することは困難であるが、父方の家族歴の聴取が参考になりうる。【結論】CPP症例における遺伝学的異常の寄与を明らかにした。既往歴や家族歴の確認が遺伝学的要因の推察に重要である。