講演情報
[O11-4]エピゲノム編集によるBeckwith-Wiedemann症候群モデルマウスの作製
○堀居 拓郎, 森田 純代, 木村 美香, 畑田 出穂 (群馬大学 生体調節研究所 生体情報ゲノムリソースセンター)
Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)は巨舌、腹壁欠損、過成長を三主徴とする先天奇形症候群である。BWSの患者ではIgf2-H19インプリント遺伝子座にあるメチル化可変領域(DMR)の過剰メチル化が見られる場合がある。本研究では、H19-DMRをエピゲノム編集により過剰メチル化することで、BWSモデルマウス作製を試みた。CRISPR-Cas9ゲノム編集システムを応用したdCas9-SunTagシステムにより標的特異的にエピゲノム修飾因子を集結させるエピゲノム編集をES細胞で実施した。DNAメチル基転移酵素であるDNMT3Bおよびヒストンのヘテロクロマチン化に関与するKRABジンクフィンガードメインをH19-DMR上に設計した9ヶ所のガイドRNAに集結させることで、過剰メチル化を行った。エピゲノム編集したES細胞の体外培養実験では、少なくとも1ヶ月間過剰メチル化が維持されていた。このES細胞を胚盤胞に注入しキメラマウスを作製した。14.5日胚のキメラ胎子を回収し、胎子と胎盤重量の測定を行ったところ、メチル化と体重に相関が見られた。また、胎子よりES細胞由来細胞を分取し、DNAメチル化レベルを解析したところ、ES細胞由来細胞のメチル化は依然高く維持されていた。エピゲノム編集されたキメラ個体は出生後も過成長を示すとともに、多指症や肝臓における嚢胞などBWSと同様の症状を示した。本研究では、エピゲノム編集による過剰メチル化によりBWSモデルマウスの作製に成功した。このモデルマウスはインプリント異常症を示す産子が生まれる原因解明や治療法の開発に寄与すると考えられる。本発表では我々が行なっている疾患モデル動物作製支援事業(AMED-BINDS)についても紹介する。