講演情報

[O13-2]日本人dysferlinopathyで最も高頻度で軽症となるc.2997G>T変異はミスセンスであることの確認

高橋 俊明1, 鈴木 直輝2, 小野 洋也2, 中西 浩隆3, 久留 聡4, 島倉 奈緒子2, 八木沼 智香子5, 井泉 瑠璃子2, 戸恒 智子1, 杉村 容子1, 下瀬川 康子6, 吉岡 勝1, 馬場 徹1, 大泉 英樹1, 田中 洋康1, 割田 仁2, 武田 篤1, 青木 正志2 (1.国立病院機構仙台西多賀病院 脳神経内科, 2.東北大学 医学部 神経内科, 3.名古屋大学 医学部 神経内科, 4.国立病院機構鈴鹿病院 脳神経内科, 5.国立病院機構仙台西多賀病院 臨床検査科, 6.国立病院機構仙台西多賀病院 脳神経外科)
【目的】 Dysferlin遺伝子の変異は常染色体潜性(劣性)遺伝形式で三好型遠位型筋ジストロフィー1型(MMD1)および肢帯型筋ジストロフィー2B/R2型(LGMD2B/R2)を主な表現型とし、dysferlinopathyという概念が確立した。日本人ではexon 28のc.2997G>T変異が最も頻度が高く、またこの変異を有すると発症が遅くなることが知られている。この変異はコード上ではp.Trp999Cysのミスセンス変異と予想されるが、コード上でミスセンスと予想される変異の20%がスプライス異常をきたすという報告もある。そのためこの変異の日本人のゲノムデータベースでの一般集団での頻度を確認し、骨格筋でスプライス異常をきたすかを検討した。【方法】 TogoVar(日本人ゲノム多様性統合データベース)でのc.2997G>T変異の頻度を参照した。ゲノムDNAを直接塩基配列決定しdysferlin遺伝子診断したc.2997G>T変異を複合へテロ型で有するdysferlinopathy患者1例の生検筋からmRNAを抽出し、RT-PCRして得られたcDNAのexon 26から31をふくむ領域にプライマーを設定しPCR産物の大きさをアガロースゲル電気泳動で観察し、Sanger法で塩基配列決定もした。【成績】 c.2997G>T変異は一般日本人集団のデータベースには存在しなかった。mRNAの解析ではプライマー設計での予想通りの大きさのPCR産物のみが得られた。塩基配列も変異を含みスプライス異常はみられなかった。そのためc.2997G>T変異はスプライス異常をきたさないと考えられた。【結論】c.2997G>T変異はミスセンス変異である。日本人で最も多く、発症の遅くなる変異がミスセンス変異であることが確認されたことは今後病態や治療研究を進める上で大きな意義もつ。