講演情報
[O14-1]希少遺伝性疾患ゲノム診断率向上に向けてのDNAメチル化キャプチャーシーケンス法の開発
○長谷川 慶太1,2, 中林 一彦1, 河合 智子1, 青砥 早希1, 春日 義史2, 副島 英伸3, 岡本 伸彦4, 田中 守2, 秦 健一郎1 (1.国立病院機構成育医療研究センター, 2.慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室, 3.佐賀大学医学部分子遺伝学・エピジェネティクス分野, 4.大阪母子医療センター研究所)
【背景・目的】希少遺伝性疾患ゲノム診断率向上におけるDNAメチル化情報の有用性が注目されている。その背景の一つとして、稀なDNA高メチル化(エピバリアント)が遺伝子プロモーター不活性化を伴うゲノム変異同定の指標となることが挙げられる。また、主にエピゲノム制御因子コード遺伝子変異で発症する50疾患で見出された個々の疾患に特徴的なDNAメチル化変動様式(エピシグネチャー)が診断確定に有効であることも示されている。本研究では、単一遺伝性疾患症例を対象にエピバリアント探索・エピシグネチャー解析を効率的に行うためのDNAメチル化キャプチャーシーケンス法の開発を試み、取得データを評価した。【方法】遺伝子プロモーター37,661領域と43疾患エピシグネチャー領域 (3643のCpG サイト) を対象としたカスタムベイトをデザインし、既製キャプチャーベイトと性能を比較した。さらにエピシグネチャー解析による疾患分類を試みた。【成績】プロモーター領域とエピシグネチャー領域をカバーするプローブの割合は、カスタムベイトが95%、二社既製品では27%と16%であった。キャプチャー性能については、1塩基あたり100以上のリードが得られるプローブの割合はカスタムベイトで55%、二社既製品では38%と39%であった。ソトス症候群、歌舞伎症候群、健常群(各8例)についてデータ取得できたエピシグネチャー領域のメチル化率でtSNE解析を行い、3群を分類できた。【結論】プロモーター領域とエピシグネチャー領域に特化したDNAメチル化シーケンス法を確立し、エピシグネチャー解析では疾患群と健常群を分類できた。本法により、単一遺伝性疾患ゲノム診断率向上のためのDNAメチル化情報補完を既存のアレイやキャプチャーシーケンスキットよりも高効率かつ低コストに実施できる。