講演情報
[O14-2]Genetic autopsyで17q12欠失症候群と診断したPotter sequenceの1男児例
○洪本 加奈1, 森貞 直哉1,2,3, 平久 進也5, 大西 徳子2,4, 船越 徹5, 野津 寛大3, 飯島 一誠3,6 (1.兵庫県立こども病院 ゲノム医療センター, 2.兵庫県立こども病院 臨床遺伝科, 3.神戸大学大学院 医学研究科 内科系講座 小児科学分野, 4.兵庫県立丹波医療センター 小児科, 5.兵庫県立こども病院 産科, 6.兵庫県立こども病院 院長)
【緒言】Potter sequenceは、胎児の腎機能障害に起因する羊水過少によって肺成熟が未熟となり、多くは生後まもなく死亡する予後不良の病態である。原因としては常染色体潜性多発性嚢胞腎(ARPKD)や先天性腎尿路異常(CAKUT)などが知られている。これらは遺伝形式が異なるため、原因疾患の確定は次子再発を予測する上で極めて重要である。今回、死産後に胎児組織を用いたGenetic Autopsyを行い、原因が特定できた症例を経験した。【症例】母体は33歳女性。妊娠18週1日で羊水過少のため当院に紹介。胎児超音波とMRIで両側多発性嚢胞腎を認め、ARPKDによるPotter sequenceを疑った。夫婦に対して考えられる胎児疾患と予後を説明したところ、夫婦は妊娠継続・分娩に対して強い負担を訴え、妊娠中絶となった。死産後、胎児の原因診断を希望し、胎児組織を用いた染色体検査・遺伝子解析を施行した。その結果、染色体検査(Gバンド法)では異常を認めなかったが、次世代シークエンサーを用いた腎疾患遺伝子解析パネルでHNF1Bのヘテロ全欠失を認め、MLPA法でLHX1とともに欠失していることが確認されたため、17q12欠失症候群と考えた。夫婦にもMLPA解析を施行したが、欠失は認めなかった。【考察】17q12欠失症候群は常染色体顕性遺伝疾患であり、本領域内のHNF1Bの異常によりCAKUTを発症する(HNF1B異常症)。ARPKDとHNF1B異常症は臨床的に極めて類似しているため、遺伝子解析が診断確定と次子再発予測に有用である。17q12欠失症候群は家系内でも表現型に差があるため、夫婦が同じ欠失を持っている可能性があった。精査の結果夫婦には欠失を認めず、次子再発の可能性は低いと考えられ、夫婦の安心感に繋がった。現在は出生前診断を希望せず、次の妊娠へ準備を進めている。【結語】流死産児にGenetic Autopsyを行うことは原因を解明するのみならず、再発率の情報を得ることにも繋がり、夫婦の次回妊娠時に重要な情報となる。