講演情報
[O14-4]胎児異常に対する網羅的遺伝学的解析の有用性の検討
○長谷川 冬雪1, 谷口 公介2, 和田 誠司1, 小澤 克典1, 杉林 里佳1, 室本 仁1, 福井 加奈1, 奥山 虎之3, 伊藤 裕司1, 左合 治彦1, 秦 健一郎2,4 (1.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター, 2.国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部, 3.国立成育医療研究センター 臨床検査部, 4.群馬大学 医学系研究科 分子細胞生物学講座)
【背景・目的】胎児期発症の疾患は、胎児期の管理と円滑な新生児期治療への移行のために迅速かつ正確な診断が求められるが、診断に苦慮する症例は稀ではない。胎児異常を伴う症例の病因病態解明を、網羅的遺伝学的解析によって試みた。【方法】2011年から2021年まで、超音波断層法による胎児形態異常を主な症状として周産期管理された133例について、出生児の病因病態同定を目的に、分娩後に全エクソームシーケンス等の網羅的遺伝学的解析を行った。症例特異的と推定されるレア・バリアントを抽出したのち、臨床経過と比較し、病因候補と推定される遺伝子多型を同定した。【結果】37.6%(50/133例)の症例で、病因候補遺伝子に病的多型を同定した。表現型別の病因候補同定率は、骨系統疾患65%(13/20)、心血管系異常60%(3/5)、腎形成異常50%(3/6)、中枢神経系形成異常42.9%(3/7)、原因不明胎児発育異常12.5%(1/8)、原因不明多発奇形38.3%(18/47)、原因不明羊水異常16.7%(1/6)、非免疫性胎児水腫27.6%(8/29)であった。また、病因候補遺伝子多型が同定された50症例のうち、臨床診断名から容易に推定できる病因遺伝子に病的多型が同定された症例は32.0%(16/50)、複数挙げられていた鑑別診断の病因遺伝子に病的多型が同定された症例は26.0%(13/50)、臨床診断が困難であったが網羅的遺伝学的解析結果と併せて考察することで有力な病因候補同定に至った症例は42.0%(21/50)であった。また、今回検討を行った症例では、全エクソームシークエンスデータのみで異数性の診断も十分に可能であった。【考察】原因不明の胎児異常や早期の治療介入が必要な疾患の一部に対しては、網羅的遺伝子解析が臨床上有用である可能性が期待された。