講演情報

[O14-5]絨毛膜羊膜炎における分子生物学的診断下での培養検査の意義

谷垣 伸治1, 花輪 智子2, 大西 英理子3, 中林 一彦3, 漆山 大知4, 小林 千絵1, 佐藤 泰紀1, 竹森 聖1, 松島 実穂1, 田嶋 敦1, 秦 健一郎3, 小林 陽一1 (1.杏林大学 医学部 産科婦人科, 2.杏林大学 医学部 感染症学, 3.国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部, 4.福岡大学 医学部 産婦人科)
【目的】絨毛膜羊膜炎(CAM)の起因菌診断へ16S rRNAのシーケンスによる菌叢解析(16S rRNA解析)の導入が試みられ,培養困難な病原体の検出やα多様性の評価にも期待されている.しかし施設内で16S rRNA解析が実施可能な施設は限られており,検査に係る時間と費用の面から汎用までの課題は多い.そこで従来の培養検査のさらなる活用を検討すべく,16S rRNA解析と比較し,培養検査の意義を考察した.【方法】対象は帝王切開で分娩し,胎盤病理組織学的検査でCAMと診断された8例(3度3例,2度3例,1度2例うち1例はDD双胎)及び非CAM3例とした.術前に採取した腟分泌物は,当院細菌検査室で培養・同定(検査室培養) し,羊水は実験室で非選択培地を用い培養した(実験室培養).16S rRNA解析はV3-V4領域を対象とし属レベルで同定した.【成績】非CAMの腟分泌物の検査室培養結果ではLactobacillusのみが同定され,16S rRNA解析の検出リードの大半がLactobacillusであるという結果と一致した.一方,2度以上のCAMの腟分泌物の16S rRNA解析では,検査室培養の検査項目に含まれないUreaplasmaが6例中3例検出された.CAM3度例のうち検体調製で回収されたDNA量が多かった2例は実験室培養も陽性であった. またCAM3度の16S rRNA解析ではα多様性の顕著な低下傾向を認めた.羊水検体は,CAM3度例の2例で,実験室培養が陽性であり,それらの検体は調製時に回収されたDNA量も多かった.これらの検体ではα多様性の低下傾向を認め,さらに菌種の検出順位は腟分泌物検体と異なっていた.【結論】α多様性の評価によるCAMの診断や,現在CAMを惹起し治療対象として考慮すべきUreaplasma等の検出には16S rRNA解析が有用であると考えられ,従来の培養検査の限界が示された.一方羊水検体では,従来の培養手法でもCAMを診断し得る可能性があることから,羊水穿刺により16S rRNA解析対象を抽出し、迅速かつ適切な検査を進める可能性が考えられた.