講演情報
[O15-3]ヒトMSTN遺伝子で初めてクローニングしたスプライシングバリアントは3’UTR内の非典型スプライスサイトを活性化していた
○前田 和宏1,2,3, Farea Manal1,2, 西尾 久英2,4, 松尾 雅文1,2 (1.神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 核酸創薬研究(神戸天然物化学)寄附講座, 2.神戸学院大学 ロコモーションバイオロジー教育研究センター, 3.神戸天然物化学株式会社, 4.神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 作業療法学科)
【背景】MSTN 遺伝子は筋細胞の増殖を抑制するミオスタチンをコードし、種を超えて保存されている。本遺伝子は3エクソンからなる単純な構造であるが、羊や鳥でスプライシングバリアント(SV)が同定されている。驚くべきことに、SVにコードされたアイソフォームはミオスタチンを阻害し筋萎縮抑制作用を有していた。このことからMSTN SVが大きく注目されているが、ヒトでSVの報告はない。今回、MSTN mRNAの解析をコーディング領域から3’UTRに広げたことで、ヒトでSVのクローニングに初めて成功した。【方法】横紋筋肉腫細胞のMSTN mRNAをRT-PCRし、PCR産物をシーケンスにより解析した。SVを発現ベクターで発現させ、western blottingにより解析した。ミオスタチンシグナルはSMAD依存性ルシフェラーゼレポーターで評価した。【結果】通常のPCRではMSTN mRNAは1本のバンドとして増幅された。一方、PCR増幅領域を3’UTRに広げたところ、正常増幅産物に加え小さな増幅産物を得た。この産物はエクソン3の5’端領域を欠失する3’UTR内の非典型スプライシングアクセプターサイトが活性化されたものであった。SVがコードするタンパクは、ミオスタチンのN末認識抗体に反応し、同じバンドが横紋筋肉腫細胞でも検出された。以上より、SVにコードされるタンパクは新規ミオスタチンアイソフォーム(ミオスタチン-b)と結論した。さらに、ミオスタチン-bはミオスタチンシグナルを阻害した。【考察】羊や鳥のSVはコーディング領域内のスプライシング産物であり、ヒトSVは3’UTR内の非典型スプライシングアクセプターを活用するため、今まで発見されなかったと考えられた。SVにコードされたミオスタチン-bはミオスタチンを阻害したことから、画期的なミオスタチン阻害剤になることが期待される。