講演情報

[O15-4]膿疱性乾癬の1例

皆川 智子1,2, 松崎 康司1, 吉川 未雪1, 六戸 大樹1, 赤坂 英二郎1, 中野 創1, 澤村 大輔1, 大門 眞3, 野村 和夫4, 渡邊 総一郎5, 杉浦 一充5 (1.弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座, 2.弘前大学医学部附属病院検査部, 3.弘前大学大学院医学研究科 内分泌代謝内科学講座, 4.青山のむら皮膚科クリニック, 5.藤田医科大学医学部 皮膚科学講座)
【緒言】汎発性膿疱性乾癬は急激な発熱に伴い全身の皮膚が紅潮し,無菌性膿疱が多発し,再発,軽快を繰り返す.ときに内臓病変を合併し,治療に難渋し死に至ることもある.難病指定疾患であり,本邦での患者数は約1800人.誘発因子は上気道感染,抗生剤などの薬剤,妊娠などである.【症例】59歳,女性.妊娠中の22歳頃に膿疱性乾癬を発症したが,出産後皮疹は軽快した.しかし,56歳頃,骨折のため1週間セレコキシブを内服した2週後に,40℃の発熱とともに,全身の潮紅や,小膿疱が出現し,膿疱性乾癬の再燃と診断された.エトレチナート50 mg/日内服開始したが,脱毛が出現したため中止し,当科紹介受診された.当科初診時,躯幹四肢に半環状や円形紅斑が散在し,一部で膿疱がみられた.また,頭部の一部に脱毛がみられた.白血球数はやや増加していたが(WBC 9670/μL,好中球75.5 %,リンパ゚球14.7%),肝・腎・耐糖能障害はみられず,シクロスポリン150 mg/日を開始した.その後,セクキヌマブ導入し,皮疹は速やかに改善した.家族歴はなかったが,インターロイキン36受容体アンタゴニストをコードするIL36RN遺伝子に c.28C>T(p.Arg10X)のヘテロ接合体変異が同定された.【考察】近年,尋常性乾癬を伴わない汎発性膿疱性乾癬の大半は,IL36RN遺伝子を病因遺伝子とする常染色体潜性遺伝性の疾患であるIL-36受容体拮抗因子欠損症(deficiency of interleukin-36 receptor antagonist ; DITRA)で,ときにはヘテロ接合体変異を背景としても発症することが解明された.IL36RN遺伝子ヘテロ接合体変異を日本人の2%弱が保有しているとされ,IL36RN遺伝子変異の関連する膿疱症は実際には多症例数であると予測されている.汎発性膿疱性乾癬のみならず,疱疹状膿痂疹や急性汎発性発疹性膿疱症などの全身性の膿疱症では,早期診断による治療介入や,誘発因子回避のためにIL36RN遺伝子変異解析の実施が望ましいと考えられる.