講演情報

[O16-1]SGA児309例の包括的メチル化解析によるインプリンティング疾患の探索

山澤 一樹1, 中嶋 萌子1, 久保井 徹2, 横田 一郎3, 杉野 典子4, 小川 昌宏4, 盆野 元紀4, 曳野 俊治5, 佐藤 和夫5, 中嶋 敏紀6, 酒見 好弘6, 井上 毅信7, 中村 明枝8, 松原 圭子9, 鏡 雅代9 (1.国立病院機構東京医療センター 遺伝診療科, 2.国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター 新生児内科, 3.国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター 小児内分泌内科, 4.国立病院機構三重中央医療センター 新生児科, 5.国立病院機構九州医療センター 小児科, 6.国立病院機構小倉医療センター 小児科, 7.東京大学医学部附属病院 小児科, 8.北海道大学病院 小児科, 9.国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部)
【背景】 Small-for-Gestational Age(SGA)は、母体因子、胎盤・臍帯因子、胎児因子などの様々な要因に起因するheterogenousな病態である。種々のインプリンティング疾患(IDs)は胎児期の成長障害を伴うことから、SGAの一部にIDsが含まれることが想定されるが、その知見は乏しい。
【目的】 SGAにおけるIDsの関与を明らかにすること。
【方法】 出生時体重が在胎週数相当の10パーセンタイル以下のSGA児309例を対象とした。臨床的に明らかな先天異常症候群は除外した。頬粘膜DNAを採取し、バイサルファイト処理を行った後、パイロシークエンス法を用いてIDs発症に関連する10箇所のメチル化可変領域(DMR)のメチル化解析を実施した。
【結果】 309例中、以下の6例(1.9%)にいずれかのDMRのメチル化異常を認め、IDsが示唆された。
症例1:2歳男児、PLAGL1:alt-TSS-DMR高メチル化、Silver-Russell症候群(6番染色体母性片親性ダイソミー)の疑い
症例2:13歳女児、MEG3/DLK1:IG-DMRおよびMEG3:TSS-DMR低メチル化、Temple症候群の疑い
症例3:5歳男児、SNURF:TSS-DMR高メチル化、Prader-Willi症候群の疑い
症例4:10か月男児、SNURF:TSS-DMR高メチル化、Prader-Willi症候群の疑い
症例5:1歳女児、ZNF597:3' DMR高メチル化およびZNF597:TSS-DMR低メチル化、16番染色体母性片親性ダイソミーの疑い
症例6:5歳男児:ZNF597:TSS-DMR低メチル化、ZNF597メチル化異常症の疑い
うち症例1、6は末梢血由来DNAで確認検査を実施し、IDsの診断が確定した。
【考察】 臨床的に明らかな先天異常症候群を除外したSGAの中にIDsが一定数含まれることが示された。メチル化異常や片親性ダイソミーといったエピゲノムの変化(エピバリアント)は原則としてde novoに発生すると想定され、遺伝カウンセリングを行う上でも重要な知見である。
【結論】 IDsはSGAの原因のひとつであり、メチル化解析が探索に有効である。