講演情報
[O16-3]Silver-Russell症候群の臨床診断基準を満たした173名における遺伝学的原因および遺伝学的原因別臨床像の検討
○鏡 雅代1, 福家 智子1, 中村 明枝1,2, 井上 毅信1, 川嶋 明香1, 原 香織1, 松原 圭子1, 佐野 伸一朗1,3, 山澤 一樹1,4, 深見 真紀1, 緒方 勤1,5,6,7 (1.国立成育医療研究センター 分子内分泌研究部, 2.北海道大学小児科, 3.静岡県立こども病院 糖尿病・代謝内科, 4.東京医療センター臨床遺伝センター, 小児科, 5.浜松医科大学小児科, 6.浜松医科大学医化学講座, 7.浜松医療センター小児科)
【背景】Silver-Russel 症候群 (SRS) は成長障害を特徴とする代表的なインプリンティング異常症 (ID) であり、臨床診断に基づいて診断される。 近年、 SRSに関する国際的コンセンサスは、臨床診断基準として6つの臨床像(SGA出生、低身長、相対的大頭、前額突出、哺乳不良、体の左右非対称)のうち4項目をみたせばSRSと診断するNetchine-Harbison clinical scoring system (NH-CSS) を用いることを推奨している。H19-differentially methylated regionの低メチル化 (H19LOM) や7番染色体母性片親性ダイソミー(upd(7)mat) がSRSの主要な遺伝学的原因であるが、 NH-CSSを満たした症例で、他のIDや病的コピー数異常 (PCNV) やメンデル遺伝病原因遺伝子変異 (PV) が報告されている。 【目的】SRSの遺伝学的原因別頻度と原因別臨床的特徴を明らかとする。【方法】NH-CSS4点以上を示す173症例に対し、既知ID同定のためにパイロシーケンス法を用いたメチル化解析、PCNV同定のためにアジレント社の60K カタログアレイを用いたaCGH解析、PV同定のためにID原因遺伝子、成長障害関連遺伝子を載せた次世代シーケンサーパネルを用いた変異解析を行い、同時に質問紙法による臨床像調査を施行した。【結果】H19LOMは49人(28.3%)、upd(7)mat は10人(5.8%)同定された。SRS以外のID は9人(5.2%)、PCNVs は5人(2.9%)、PVsは2人(1.2%)で同定された。NH-CSS6項目すべてを満たした症例はH19LOM、upd(7)mat陽性例で最も多かった。【考察】本研究は、NH-CSSを満たしたSRS症例に着目し遺伝学的原因およびその臨床像を検討した初めての研究である。そして、H19LOM, upd(7)matはSRS表現型に最も寄与するが、それ以外の原因をもつものがNH-CSSを満たした症例に一定数含まれていることを示した。【結論】本研究はNH-CSSの有用性とSRSの遺伝学的多様性を示し、SRSをスペクトラムと見なす議論の必要性を提唱した。