講演情報
[O18-2]難聴の遺伝学的検査のアップグレード
○西尾 信哉, 宇佐美 真一 (信州大学 医学部 人工聴覚器学講座)
先天性難聴は、新出生児1000人に1から2人に認められる比較的頻度の高い疾患である。疫学調査によると、先天性難聴あるいは小児期発症の難聴の原因のうち60から70%に遺伝子が関与することが推測されており、原因として最も頻度が高いのが遺伝性難聴である。遺伝学的検査を行い難聴の原因を明らかにすることで、難聴のタイプや重症度、予後の予測、随伴症状の予測など難聴の個別化医療の実現に欠かすことできない有用な情報が得られる。我々の研究室では、従来より「難聴の遺伝子解析研究」の成果を臨床に還元することを目標に研究を行なっており、2012年の保険点数改訂により「遺伝学的検査(先天性難聴)」として保険収載され健康保険での検査かが可能となり、全国の大学病院なとどで日常の臨床検査ツールとして実施されるようになった。また、2015年8月からは、検査法を次世代シークエンス法とインベーダー法の併用とするなど診断率を向上させてきた。最近、我々は102施設との共同研究により収集された日本人難聴患者10,047例の遺伝子解析の結果を論文として報告したが(Usami & Nishio 2022)、本報告の成果を、保険診療で実施している次世代シークエンス解析に反映させることで、診断率の大幅な向上が期待できる。そこで、株式会社ビー・エム・エルとの共同により保健検査のアップグレードの準備を進めており、本年の秋をめどに、検査対象を50遺伝子1,118変異までに増加させるとともに、結果判定医のコメントを付して結果を報告する形に切り替える予定である。発表では保険検査のアップグレードの状況やCNV検出などについてを紹介するとともに、今後の展望について紹介する予定である。