講演情報

[O18-3]POU4F3遺伝子変異による難聴症例の検討

小池 隆史1, 岩崎 聡1, 高橋 優宏1, 岡 晋一郎1, 小山田 匠吾1, 西尾 信哉2, 宇佐美 真一2 (1.国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科, 2.信州大学 医学部 人工聴覚器学講座)
【はじめに】POU4F3遺伝子は常染色体優性遺伝形式をとる非症候群性難聴(DFNA15)の原因遺伝子として報告されており,内耳の蝸牛及び前庭有毛細胞の最終分化と構造維持に関与し,その障害により難聴や平衡感覚障害をきたすとされている.当院では2013年より難聴の遺伝学的検査を開始し,2022年5月時点で700症例以上(先天性難聴,遅発性難聴の両方を含む)に施行しており,そのうちPOU4F3遺伝子変異によると考えられる難聴症例について検討したので報告する.【方法】当院では難聴の遺伝学的検査として,保険での検査及び信州大学との共同研究による次世代シークエンサーを用いた既知難聴遺伝子63遺伝子のパネル解析を行っている.そこで見出されたPOU4F3遺伝子変異によると考えられる難聴症例の臨床経過をまとめ文献と比較検討した.【結果】POU4F3遺伝子変異による難聴症例を7例見出した.そのうち,検査年齢が20-39歳の症例が3例,40-59歳の症例が3例,60歳以上の症例が1例であった.20-39歳の症例の聴力像では中音域に難聴をもつ皿型,谷型を示し,重症度は軽度-中等度であった.40-59歳の症例は低音域,高音域にも難聴を示し,重症度も中等度-高度とばらつきがあった.60歳以上の症例は重度難聴であった.全体の傾向として全ての症例に進行性の難聴を認めた。めまいの自覚症状がある症例は認めなかった.介入として,中等度難聴で補聴器を装用した症例が3例,高度-重度難聴で人工内耳を行なった症例が1例であったが、いずれも良好な聴取成績を示した. 【考察】今回の検討では臨床的特徴に関して過去の文献と同様の傾向であった。補聴器や人工内耳の詳細な聴取成績,前庭機能検査についての報告は少ないため,今後はそれらの情報も含めより多くの症例で検討が必要であると考えられる.