講演情報

[O19-3]先天性QT延長症候群における遺伝学的診療(患者および未発症血縁者の遺伝学的検査を含めた遺伝カウンセリング)に関する実態調査

石川 亜貴1,2,3, 水上 都2,4, 春日 亜衣3, 櫻井 晃洋1,2 (1.札幌医科大学医学部 遺伝医学, 2.札幌医科大学附属病院 遺伝子診療科, 3.札幌医科大学医学部 小児科学講座, 4.札幌マタニティ・ウイメンズホスピタル 小児科)
【背景】本邦では先天性QT延長症候群(以下LQTS)の遺伝学的検査が2008年に保険適用,2018年より民間検査会社で受託が開始された.患者と未発症血縁者への個別化医療を円滑に切れ目なく行うためには循環器領域の専門医と遺伝子診療部門との連携,協働が必須である.【目的】遺伝子診療部門が担っているLQTSの遺伝学的診療の実態を調査し,課題を明らかにする.本研究は当院臨床研究審査で承認及び機関の長の許可を得ている.【対象と方法】全国遺伝子医療部門連絡会議の維持機関会員施設140施設に対し無記名式アンケート調査を実施.【結果】2022年6月29日時点で140施設中54施設から回答を得た(回答率38.5%).施設属性:大学病院33施設,大規模病院(400床以上)16施設,小児総合医療施設4施設.過去5年間のLQTSのGC件数:20件以上3施設,10-19件4施設,1-9件19施設,0件28施設.患者の遺伝学的検査の担当:主治医(小児科/循環器内科)9施設(30%),遺伝子診療部門9施設(30%),両者どちらも12施設(40%).未発症血縁者のGC担当:主治医6施設(20%),遺伝子診療部門13施設(43.3%),両者どちらも11施設(36.7%).連携,協働のための活動:電話,メール,電子カルテでの情報共有22施設(71%),症例検討会,カンファレンス12施設(38.7%),遺伝子診療部門の外来に主治医が同席10施設(32.3%),小児科/循環器内科の外来に同席9施設(29%).疾患特性の説明に難しさを感じる26施設(48.1%),やや難しさを感じるが22施設(40.7%)であった.説明の難しさを取り除くために必要なことは,循環器領域の医療者からの支援42施設(85.7%),患者家族への説明文書27施設(55.1%),循環器領域を専門とする臨床遺伝専門医24施設(49%),LQTS診療に習熟する教育機会24施設(49%)であった.【考察】遺伝子診療部門と循環器領域の専門医との連携,協働が必須であることが示唆された.患者家族向けの説明補助ツールの作成と活用,地域や施設の特色に合わせた診療体制の構築が課題である.