講演情報

[O25-5]日本人がん患者コホートにおいて全エクソン解析結果を用いて算出されたHRDスコアと遺伝子変化の関連性について

成岡 茜1, 芹澤 昌邦1, 堀内 泰江2, 長嶋 剛史2,3, 大浪 澄子2, 大島 啓一1,4, 畠山 敬一4, 大浪 俊平2, 浦上 研一2, 秋山 靖人5, 山口 建6 (1.静岡県立静岡がんセンター研究所 新規薬剤開発・評価研究部, 2.静岡県立静岡がんセンター研究所 診断技術開発研究部, 3.株式会社エスアールエル, 4.静岡県立静岡がんセンター研究所 遺伝子診療研究部, 5.静岡県立静岡がんセンター研究所 免疫治療研究部, 6.静岡県立静岡がんセンター)
背景:BRCA1/2の病的バリアントなどで起こることが知られている相同組換え修復欠損(HRD)は、がん組織でよくみられるゲノム不安定性の一般的な分子特性であり標的療法のバイオマーカーである。特定のがん種においてHRDスコアを用いたコンパニオン診断が行われ治療に役立てられているが、全がん種におけるHRDの影響はあまり報告されていない。

目的:全エクソン解析(WES)の解析結果からHRDスコアを算出し、全がん種においてHRDスコアが高い腫瘍の特徴を遺伝子変化について確認し、HRDスコアと遺伝子変化の関連について評価することを目的とした。

方法:HRDスコアは5,063人の日本人がん患者コホートのWES解析結果を用いて算出した。HRDスコアに基づきHighからLowの4つのグループに分類し、これらのグループの特徴を体細胞および生殖細胞系列の変化について確認した。

結果:BRCA1/2生殖細胞バリアントはHighのグループで頻度が高かった。TP53の体細胞バリアントは、上位3つのグループで同じ頻度だったがLowでは低かった。結腸がんではBRCA1/2生殖細胞系列バリアントとTP53体細胞バリアントを保持していてもHRDスコアは上昇していなかった。BRCA1/2が属するゲノムメンテナンスパスウェイ関連遺伝子の体細胞バリアントは、4つのグループにおける遺伝子変化は同様であった。

結論:我々のコホートにおいても高いHRDスコアを示す多くの症例が検出されたが、その原因は完全には特定されなかった。そして、体細胞バリアントがHRDスコアへ与える影響は限定的であり、生殖細胞系列バリアントが与える影響が大きいと考えられる。したがって、WES解析結果を用いたHRDスコアの算出においても、より正確な生殖細胞系列バリアントの検出が重要である。