講演情報

[O26-1]マイクロアレイ染色体検査で検出される染色体中間部の非反復性ゲノムコピー数減少に伴う染色体再構成に関する文献的考察

涌井 敬子1,2 (1.信州大学 医学部 遺伝医学教室, 2.信州大学 医学部附属病院 遺伝子医療研究センター)
マイクロアレイ染色体(CMA)検査が保険収載され、原因不明の先天異常を有する患者の臨床診断率の向上が期待される。CMA検査はゲノムコピー数の不均衡(CNV)を遺伝子の情報も含めて明らかにすることができるが、CNVに伴う染色体再構成は確定できない。稀ではあるが、患者のCNVに伴う染色体再構成が親の均衡型構造異常に起因している場合もあるため、どのようなCNVにどのような染色体再構成の可能性があるかを、遺伝医療・ゲノム医療関係者は認識しておく必要がある。
患者にある染色体の端部部分欠失と別の染色体の端部部分重複が検出され、その再構成が不均衡型転座であった場合、片親に関連する均衡型転座が確認される家系があることはよく知られている。患者にある染色体の片腕の端部部分欠失と他腕の端部部分重複の再構成が確認された場合、片親の腕間逆位が起因となっている場合があることも知られている。
一方、中間部欠失は反復性のものも多くほとんどがde novoであると認識されているが、非常に稀ながら親に関連する均衡型構造異常を確認した報告もある。中間部欠失のうち反復性CNV領域以外で再構成を確認した文献を検索し、次のような様々な機構による中間部欠失例を確認した。1) 患者はG分染法で一見均衡型構造異常だったが、構造異常の切断点に欠失を認めた。2) 片親に均衡型挿入があり、患者に欠失を認めた。3) 片親が中間部欠失と欠失断片からなる無動原体染色体を有する核型で、患者に欠失を認めた。4) 片親に腕内逆位があり、患者に欠失を認めた。
非反復性CNVに伴う染色体再構成はほとんどがユニークであり、その特定は明らかになっていない病態解明に繋がる可能性もある。稀少な染色体再構成は、将来全ゲノムシークエンス解析が実施されれば新規のgenome structural variationとしても登録されうる。中間部欠失でも非反復性領域はde novoとは限らないことを認識し、必要に応じた追加検査実施が考慮される。