講演情報
[O26-4]SNORD遺伝子領域を含んだ15番染色体中間部欠失によるPrader-Willi症候群の一例
○長坂 美和子1,2, 四本 由郁1,2, 中田 有紀1,2, 服部 有香1,2, 春藤 望2, 齋藤 伸治3, 松原 圭子4, 玉置 知子2 (1.愛仁会高槻病院 小児科, 2.愛仁会高槻病院 遺伝診療センター, 3.名古屋市立大学 大学院医学研究科新生児・小児医学分野, 4.国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部)
【緒言】Prader-Willi症候群(PWS)は新生児期に筋緊張低下、哺乳不良、停留精巣などから疑われ、遺伝学的検査が施行されることが多い。サブタイプにより診断方法が異なり、メチル化解析の診断率が99%であることから現行のガイドラインでは第1選択となっている。一方で、メチル化異常を示さず、SNORD116遺伝子を含む非典型的な欠失を発症原因とするPWS症例も散見される。MS-MLPA法やマイクロアレイ染色体検査によるコピー数解析が、確定診断に必要になることもある。【症例】正期産で出生した男児。出生後より筋緊張低下、停留精巣を認め、哺乳不良、虹彩・眼底の低色素からPWSを疑った。遺伝カウンセリングを行い、遺伝学的検査を順次行った。児は哺乳不良が持続し経管栄養で退院したが、4か月時に哺乳が確立した。【遺伝学的検査結果】染色体核型は46,XY,del(15)(q12q14)、SNRPN遺伝子をプローブとするFISHで欠失なし、メチル化解析は正常。マイクロアレイ染色体検査検査で15q11.2-14領域に欠失を認めた。欠失範囲にSNRPN遺伝子は含まれず、SNORD116遺伝子を含むクラスターが含まれていた。15番染色体上にヘテロ接合性の消失を示唆する所見はなく、他の染色体に発症原因となりうるコピー数異常も認められなかった。【診断】SNORD116を含み、SNURF:TSS-DMRを含まない欠失によるPWSと診断した。なお遠位切断点はq14領域にあり、全体で約11 Mbの欠失であった。【考察】近年、PWSの責任領域としてSNORD116領域が注目されているが、本例ではこの領域が欠失していたものの、従来は責任遺伝子と考えられていたSNRPN遺伝子が2アレルとも保持されており、SNRPN遺伝子をターゲットとするメチル化解析やFISH法では診断できなかった。SNRPN遺伝子を含まない欠失も検出できるMS-MLPA法およびマイクロアレイ染色体検査が保険適用となっており、非典型的な欠失を示すPWSの診断にはこれらの検査法が有用であることが示された。