講演情報
[O27-3]CEP290病的バリアントのヘテロ接合体と複合ヘテロ接合体の低頻度モザイクが原因と疑われたJoubert症候群の1例
○齋藤 洋子1, 熊木 達郎1, 黒田 友紀子1, 榎本 友美2, 山田 茉未子3, 鈴木 寿人3, 武内 俊樹3, 小崎 健次郎3, 黒澤 健司1,2 (1.神奈川県立こども医療センター 遺伝科, 2.神奈川県立こども医療センター 臨床研究所, 3.慶應義塾大学医学部 臨床遺伝学センター)
【背景】Joubert症候群は小脳と脳幹の形態異常、筋緊張低下、発達遅滞、そして呼吸障害もしくは非典型的な眼球運動を呈する疾患で、およそ10万人に1人の有病率とされている。原因遺伝子は30以上報告されており、その中でCEP290は7-10%を占める。今回、CEP290のヘテロ接合体でありながら、一部複合ヘテロ接合体を低頻度モザイクとして有したために、表現型が軽度であった症例を経験したため報告する。【症例】5歳女児。筋緊張低下、軽度の精神運動発達遅滞、睡眠時無呼吸発作があり、頭部MRIでJoubert症候群に特徴的なMolor tooth signを認め、遺伝学的検査目的に当科紹介受診した。メンデル遺伝病パネル解析でCEP290片アレルのバリアントを検出したが確定に至らず、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)へ解析を依頼した。解析の結果、CEP290[NM_025114.3]にc.1623+1G>T(既報告バリアント)およびc.6266T>G(p.Leu2089*)(未報告バリアント)を認めた。c.6266T>G(p.Leu2089*)はVAF 26%(13/50、Nextera TXによるdeep seqでVAF 7.8%、2949/37661)で、Sanger法によりc.1623+1G>Tは母由来であることを確認したが、c.6266T>GはSanger法およびNextera TXでは親由来を確認できなかった。RNAシークエンスでもリード数の限界があり変異アレル由来リードは確認できなかった。しかし、表現型に矛盾なく、CEP290の複合ヘテロ変異によるJoubert症候群と推定した。現在中学1年生だが普通学級に進学している。長鎖シーケンス解析による親由来の同定を検討している。【考察】CEP290変異によるJoubert症候群の患者では網膜ジストロフィーと腎疾患を有する症例が多いとされている。本症例ではどちらもみられておらず、複合ヘテロ接合体の低頻度モザイクの影響が考えられた。診断には臨床症状と画像所見が大きく寄与しており、潜性(劣性)遺伝性疾患の非典型軽症例の遺伝学的診断における臨床情報の重要性と課題が改めて示された。