講演情報

[O27-4]DMD/BMDの家族歴のないジストロフィン遺伝子変異を有する女児の検討

李 知子, 片山 慈之, 徳永 沙知, 谷口 直子, 下村 英毅, 竹島 泰弘 (兵庫医科大学 小児科学)
【緒言】筋疾患の家族歴を有さない女児における筋症状や高CK血症では、Duchenne/Becker型筋ジストロフィー(DMD/BMD)保因者の可能性も考慮した診断アプローチが必要となる。一方、ジストロフィン遺伝子変異を有する女性の多くは無症状とされるが、女児の臨床像については十分に明らかになっていない。私たちはDMD/BMDの家族歴のないジストロフィン遺伝子変異を有する女児について検討した。【対象と方法】当院小児科に2014年4月から2021年10月の間に受診し、ジストロフィン遺伝子変異を同定した女児を対象とした。DMD/BMDの家族歴がある症例および20歳以上の症例は除外した。診療録を元に、診断プロセス・臨床像について検討した。【結果】対象は9例、初診時年齢は0-11歳であった。受診契機は、筋症状(有症状群):4例、機会採血での無症候性高CK血症(無症状群):5例 であった。有症状群では、筋痛、腓腹筋肥大などの筋症状の他、2例で言語の遅れを合併していた。当院初診時CK値(IU/L)は、有症状群:1,808-13,177、無症状群:765-1,932であった。有症状群のうち2例で筋生検を実施した。うち1例は炎症性筋疾患を疑い筋生検を実施したが診断に至らず、遺伝子検査により確定診断した。遺伝子変異は、エクソン単位の欠失:3例、ナンセンス変異:3例、微小欠失挿入変異:1例、スプライスサイト変異:1例、染色体異常:1例であった。【考察と結語】ジストロフィン遺伝子変異を有する女児の一部では、幼少期より様々な症状を呈し、臨床所見のみでは他疾患との鑑別が困難な場合もあった。家族歴のない女児の筋症状や高CK血症では、倫理的配慮や検査の侵襲性を踏まえた診断ストラテジーが求められる。女児自身の健康管理のために、適切に診断しフォローアップする必要がある。