講演情報

[O28-2]潜在性挿入転座によるMECP2重複症候群の女児例

小田 小百合1, 相良 真理子1, 堀田 優稀1, 逆井 悦子1, 大場 大樹2, 来住 美和子2, 澤田 優貴2, 小林 美和2, 小山 真弘3, 大橋 博文2 (1.埼玉県立小児医療センター 遺伝検査室, 2.埼玉県立小児医療センター 遺伝科, 3.埼玉県立小児医療センター 検査技術部)
【はじめに】MECP2重複症候群は、筋緊張低下、精神発達遅滞、進行性痙性障害、反復性感染症および難治性てんかんを特徴とする。典型的表現型の男性患者の大多数では母親がMECP2重複の保因者である。一般に女性ではMECP2遺伝子のタンデム重複を有するX染色体が選択的に不活化されるために無症状である。一方、女性でも様々な程度の症状を有する場合があり、そうした例ではタンデム重複したX染色体が選択的に不活化されていないためというのが一般的な説明である。しかし女性発症者の中には、ときにMECP2領域を含んだ染色体領域の常染色体への不均衡型転座を原因とする例が存在し、その場合には転座領域にはX染色体の不活化が及ばず、男性と同等の典型的表現型を呈すると考えられる。【症例】4歳10ヶ月、女児。重度の精神運動発達遅滞(独歩2歳9か月、発語は未)を主訴に受診。染色体検査は異常なかったが、マイクロアレイ解析でXq28領域(MECP2遺伝子を含む)の約600 kbpのコピー数上昇(重複)を認めた。続いて行ったBACクローンを用いたmetaphase-FISHで同領域の2番染色体短腕への挿入を検出した。【考察】常染色体への不均衡転座による女性患者例の存在は知られているが、挿入転座性例は極めて稀である。常染色体への転座例では転座領域が不活化を受けないために女性であっても典型的な表現型を呈すると考えられる。また、母親が挿入転座保因者であった場合には、母親はMECP2領域のコピー数は正常であるため、その診断にはmetaphase-FISHを用いることが肝要と考えられる。