講演情報
[O30-4]HECW2変異に起因する中枢神経・筋障害の重症度に関する考察
○柳下 友映1, 星野 恭子2, 石垣 景子1, 佐藤 孝俊1, 福永 道郎2, 木村 一恵2, 山本 圭子3, 朝野 仁裕4, 永田 智1, 山本 俊至5 (1.東京女子医科大学 小児科, 2.昌仁醫修会 瀬川記念小児神経学クリニック, 3.東京女子医科大学 輸血プロセシング部, 4.大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学, 5.東京女子医科大学 ゲノム診療科)
【はじめに】HECW2(HECT, C2 and WW domain containing E3 ubiquitin protein ligase 2 gene)はタンパクのユビキチン化に関与している。ユビキチン化に関連する遺伝子の多くは、神経発達障害の原因遺伝子として特定されている。【症例】25歳女性。周産期歴:在胎38週3日仮死なく出生。現病歴:生後3カ月健診にて定頚が遅れ、生後5か月に筋緊張低下あり筋疾患が疑われた。精神運動発達は年齢相応であるが、筋緊張低下が持続し、6歳時筋生検も行われ、微小変化の先天性ミオパチーと診断された。成績は下位だったが,大学までは卒業した。24歳時に閉鎖空間内で意識が遠のく感じがありチカチカするものが見え覚醒脳波にて異常あり、てんかんと診断され、知的には退行が認められている。現在全身るい痩あり、顔貌はミオパチー様、構音障害、近位筋の筋力低下を伴うため先天性ミオパチーパネル施行、NEBの病的変異が検出されたが、この遺伝子では症状の説明がつかず、ご本人ご家族の同意の元、病因検索のため、IRUDで患者末梢血から抽出したDNAを用い、Whole Exome解析を行った。【結果】HECW2に変異NM_020760.4(HECW2):c.3571C>T (p.Arg1191Trp)が認められ、同変異をサンガーシーケンスで再度確認を行いWhole Exome解析の結果と矛盾せず、同変異は両親で確認されずde novoであることが示唆された。【考察】 解析結果を基に、IRUD exchangeを通じて同じ遺伝子の変異を持つ症例を調べたところ、全5例が同定された。本症例以外の4症例はいずれも重度の精神発達遅滞と筋緊張低下を示した。重症例4症例ではいずれもHECTドメインに位置するミスセンス変異であったの対し、本症例はHECTドメインの前の領域に変異を認めている。既報において、比較的軽度の例についてHECTドメイン以外の領域に変異が同定されていることから、HECTドメインにおける機能獲得変異がHECW2に起因する障害のメカニズムに関与していることが示唆される。