講演情報
[O30-5]VPS35L関連Ritscher-Schinzel症候群の臨床的多様性と分子機構
○大辻 塩見1, 西尾 洋介1, 辻田 麻紀2, Malene Rio3, Huber Lequesne Celine3, Anton-Plagaro Carlos4, 水野 誠司5, 河野 好彦6, 宮武 聡子7,8, Simon Marleen9, van Binsbergen Ellen9, van Jaarsveld Richard9, 松本 直通7, Cormier-Daire Valerie3, J Cullen Peter4, 齋藤 伸治1, 加藤 耕治4 (1.名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児小児医学分野, 2.名古屋市立大学大学院医学研究科 神経生化学分野, 3.Department of Medical Genetics, Necker-Enfants Malades Hospital, Paris, France., 4.School of Biochemistry, University of Bristol, Bristol, U.K., 5.愛知県医療療育総合センター中央病院 小児内科, 6.トヨタ記念病院 小児科, 7.横浜市立大学大学院医学研究科 遺伝学分野, 8.横浜市立大学 附属病院 遺伝子診療科, 9.Department of Genetics, University Medical Center Utrecht, Utrecht, the Netherlands.)
【目的】膜蛋白のリサイクルを担う複合体のひとつであるレトリーバーのコアサブユニットVPS35Lは、WASHC5、CCDC22に続くRitscher-Schinzel症候群(RSS)の第3の責任遺伝子である。現在までに1家系の姉弟のみが報告されており、その症状は典型的なRSSよりも有意に重篤であった。本研究では、VPS35L関連RSSの臨床スペクトラムとその背景にある分子機構を理解することを目的とした。
【方法】両アレル性VPS35L遺伝子変異を有する3名の新規患者を集積し既報告の2例を加えて臨床症状を検討した。さらに、患者由来リンパ芽球(LCL)およびNIH3T3細胞を用いたVPS35Lノックダウン(KD)/ノックアウト(KO)細胞を用いて解析を行った。
【結果】RSSの典型的な特徴に加えて、高コレステロール血症、低ガンマグロブリン血症、腸管リンパ管拡張症、蛋白尿が確認された。後者3つの合併症は、CCDC22やWASHC5に変異を有する患者では報告されておらず、VPS35L関連RSSに特異的な可能性がある。疾患の全般的重症度は新規患者1例では重度であり、2例では軽度であった。軽度の患者由来LCLは、より重度の患者由来LCLと比較して、VPS35L蛋白の発現が高く、発現量と重症度との関連が示唆された。VPS35L KD/KO細胞では膜蛋白のLRP1とLDLRの発現レベルが低下し、結果としてLDLの細胞への取り込みが減少した。
【結論】新規の症候群であるVPS35L関連RSSの疾患概念を示した。古典的なRSSの症状に加えて、特有の症状が存在する可能性がある。高コレステロール血症の原因としてLRP1とLDLRの低下を同定し、これらはレトリーバーによりリサイクルされていることが示された。
【方法】両アレル性VPS35L遺伝子変異を有する3名の新規患者を集積し既報告の2例を加えて臨床症状を検討した。さらに、患者由来リンパ芽球(LCL)およびNIH3T3細胞を用いたVPS35Lノックダウン(KD)/ノックアウト(KO)細胞を用いて解析を行った。
【結果】RSSの典型的な特徴に加えて、高コレステロール血症、低ガンマグロブリン血症、腸管リンパ管拡張症、蛋白尿が確認された。後者3つの合併症は、CCDC22やWASHC5に変異を有する患者では報告されておらず、VPS35L関連RSSに特異的な可能性がある。疾患の全般的重症度は新規患者1例では重度であり、2例では軽度であった。軽度の患者由来LCLは、より重度の患者由来LCLと比較して、VPS35L蛋白の発現が高く、発現量と重症度との関連が示唆された。VPS35L KD/KO細胞では膜蛋白のLRP1とLDLRの発現レベルが低下し、結果としてLDLの細胞への取り込みが減少した。
【結論】新規の症候群であるVPS35L関連RSSの疾患概念を示した。古典的なRSSの症状に加えて、特有の症状が存在する可能性がある。高コレステロール血症の原因としてLRP1とLDLRの低下を同定し、これらはレトリーバーによりリサイクルされていることが示された。