講演情報
[P10-5]日本人MODY1患者の全エクソームシーケンシング解析
○田中 慧1,2, 赤川 浩之1, 岩崎 直子1,2,3 (1.東京女子医科大学 総合医科学研究所, 2.東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科学分野, 3.東京女子医科大学 附属成人医学センター)
Maturity Onset Diabetes of the Young(MODY)は、単一遺伝子の機能障害を原因として発症する常染色体顕性遺伝を示す糖尿病である。これまで15種の病型と疾患遺伝子が特定されている。このうち核内受容体型転写因子であるHepatocyte Nuclear Factor 4 Alpha(HNF4A)の病的バリアントに伴うインスリン分泌不全により発症する型がMODY1である。全エクソームシーケンシング(Whole-exome Sequencing, WES)により、4例の患者から個別のミスセンスバリアントを検出した(NM_175914:p.R290H、p.R114Q、p.A363Vとp.M376T、p.R112Q)。p.R290Hおよび p.R112Qは既報で、p.R290Hは人工知能ツールSpliceAIによりスプライス異常を来す可能性が示唆された。これらのミスセンスバリアントに対して実施した機能解析を提示する。さらに、HNF4Aを含む既知MODY遺伝子群にもpoint mutationが認められなかった例については、eXome-Hidden Markov Model(XHMM)に代表されるリードカウントデータを利用した構造変異検索を行った。その結果、HNF4Aの全欠失および第5から第7エクソンのヘミ接合性の欠失を各1例検出した。これらの欠失はMultiplex Ligation-dependent Probe Amplification(MLPA)法によって確認した。今回の解析でMODY1の診断に至った4例のうち2例(50%)はサンガーシーケンスでは同定できない病的バリアントであった。MODY1では1.9%にエクソンレベルの欠失が認められるとの報告がある。MODYの遺伝学的検査を進めるにあたっては、WESがゲノム構造変異についてもカバー可能であり、既知MODY遺伝子のすべてを効率よくかつ安価に解析できることから第一選択肢になっていくと考えられる。