講演情報
[P10-6]全ゲノムシーケンスはエクソーム解析で未診断のチャージ症候群の患者のdeep イントロン領域の病的変異を同定した
○榎本 友美1, 村上 博昭2, 熊木 達郎2, 成戸 卓也1, 黒澤 健司1,2 (1.神奈川県立こども医療センター 臨床研究所, 2.神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
【背景】チャージ症候群はColoboma(網膜の部分欠損), Heart defects(先天性心疾患), Atresia of choanae(後鼻腔閉鎖), Retarded growth and development(成長障害), Genital abnormalities(外陰部低形成), and Ear anomalies(耳奇形・難聴)を主症状とする症候群で、上述した症状の頭文字より命名されている。原因遺伝子はChromodomain helicase DNA binding protein-7 (CHD7 )であり、常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる。【症例】患者は、在胎39週、3158gで出生。左コロボーマ、両側難聴、右後鼻孔閉鎖、大動脈縮窄複合、両側停留精巣、胃・食道逆流の症状を有し、臨床的にチャージ症候群と診断された。【結果・考察】全エクソーム解析ではCHD7に病的バリアントは検出されず、全ゲノム解析を施行した結果、CHD7のdeep イントロン領域にまれな1塩基置換のバリアントが検出された。サンガーシーケンスによる両親解析により、本バリアントがde novoであることが確認された。病的バリアントを疑い末梢血RNAを用いたRT-PCRを施行した結果、正常検体ではみられない異常転写産物が検出され、そのシーケンス解析によりバリアントがスプライシング異常を引き起こしていることがわかった。またRNAseq解析でもバリアントによる異常転写産物が確認された。症状と矛盾なく疾患発症の原因バリアントと考えられた。未診断症例における全ゲノムシーケンスおよびRNAseqの臨床的有用性について検討を加えた。