講演情報
[P11-10]Mowat-Wilson症候群の原因遺伝子ZEB2のイントロンバリアントが及ぼすRNAスプライシングへの影響
○鈴木 康予1, 野村 紀子1, 山田 憲一郎1, 山田 裕一1, 福田 あゆみ2, 星野 恭子3, 稲葉 美枝4, 水野 誠司4, 若松 延昭5, 林 深1 (1.愛知県医療療育総合センター 発達障害研究所 遺伝子医療研究部, 2.日本大学 医学部附属板橋病院 小児科, 3.昌仁醫修会 瀬川記念小児神経学クリニック, 4.愛知県医療療育総合センター 中央病院 小児内科, 5.高松市立みんなの病院 神経内科)
Mowat-Wilson症候群(MOWS, OMIM#235730)は、精神運動発達遅滞、特徴的な顔貌、小頭症、ヒルシュスプルング病などを主な症状とする遺伝性疾患で、原因遺伝子ZEB2のハプロ不全で発症する。病的変異の多くは、ZEB2の欠失・ナンセンス変異・フレームシフト変異である。一方で、翻訳産物の機能喪失をきたすスプライシング異常の報告はまれであり、エクソン-イントロン接合部周辺のゲノムバリアントの多くは臨床的意義不明バリアント(VUS)となることが多い。我々は、従来解析してきたMOWS疑い症例172例から、ZEB2のエクソン近傍のイントロンにバリアントを有する3症例を同定している。症例1はc.73+2T>G、 症例2はc.916+6T>G、症例3はc.1451C>A に加えてc.3067+6A>Tが認められた。症例1、症例3は典型的なMOWSの表現型を呈する一方、症例2は知的障害が軽度な軽症例であった。これらのZEB2バリアントの病的意義を明らかにするため、発現ベクターにバリアント近傍のエクソンを含めたミニジーンを導入してRNAスプライシングアッセイを行った。その結果、症例1と症例2ではエクソンスキップしたスプライシング産物を確認したが、MOWS典型例由来のc.73+2T>Gを含むミニジーンから産生されたRNAはほぼ変異産物であったのに対し、軽症例由来のc.916+6T>Gでは正常産物と変異産物の両方が検出された。すなわち、スプライシング異常の程度がMOWSの重症度と相関する可能性が示唆された。本研究は、イントロンのVUSの病的意義の同定にはミニジーン解析が有用であり、遺伝性疾患におけるgenotype-phenotype連関解明の一助となり得ることを示している。