講演情報

[P11-3]全身合併症を有するホモ接合性AIREスプライスサイト変異の姉妹

辰巳 嵩征1, 佐々木 愛子1, 海野 沙織1, 金子 佳代子1, 藤野 佐保1, 藤部 佑哉1, 森田 泰介1, 梶原 一紘1, 小西 晶子1, 宮迫 さおり2, 石川 尊士3, 河合 利尚3, 長谷川 冬雪1, 網田 光善1, 齊藤 隆和1, 鳴海 覚志2, 左合 治彦1 (1.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター, 2.国立成育医療研究センター 分子内分泌研究部, 3.国立成育医療研究センター 免疫科)
【緒言】AIRE(autoimmune regulator)は21q22.3に座位し、免疫の自己寛容制御に重要な役割を果たす遺伝子である。AIRE変異は副腎皮質機能低下症・副甲状腺機能低下症・皮膚カンジダ症・性腺機能低下症などの症状を呈し、口腔・食道扁平上皮がんのリスクが高い自己免疫性多腺性内分泌症候群(PGA)を引き起こす。遺伝形式は大半において常染色体潜性遺伝を示すが、顕性遺伝を示す家系の報告もある。今回我々は、近親婚の両親から受け継いだホモ接合性AIRE変異をもち、異なる臨床像を呈した姉妹例を経験したので報告する。
【症例】両親がいとこ婚。症例1; 40歳女性。思春期から副腎皮質機能低下症を指摘されステロイド内服加療を行われていた。35歳で口腔カンジダ症、39歳他院にて不妊治療施行中にエストロゲン分泌不全を認めたため、卵子凍結ののちに精査目的に当センターを紹介された。症例2; 42歳女性。症例1の姉。2歳から副甲状腺機能低下症、30歳から副腎皮質機能低下症を指摘された。30代後半から早発卵巣不全および赤芽球瘻を呈し、現在も赤芽球瘻の治療中である。
【結果】症例1において、全身合併症に対する原因検索のために全エクソーム解析を行った。AIREスプライスサイト変異(NM_00383, exon11 c.1400+1G>A)をホモ接合で認めた。家族の解析を行い、両親が同変異のヘテロ接合体、姉がホモ接合体であることを確認した。
【考察】生殖年齢では次世代への遺伝が問題となる。無症状の父母はヘテロ接合体であり、PGAの臨床像を呈した姉妹はともにホモ接合体であったことから常染色体潜性遺伝形式と考えられた。今回の遺伝子解析にて多彩な症状の原因が判明し今後の健康管理の一助となったとともに、この姉妹の次世代でPGAを発症する可能性が低いことが示された。