講演情報

[P11-5]無症状の父親由来のLEMD3遺伝子病的バリアントで発症したBuschke-Ollendorff症候群の症例

上原 健史1,2, 関 衛順1, 榎本 友美3, 馬場 直子4, 田中 水緒5, 室谷 浩二2, 黒澤 健司1 (1.神奈川県立こども医療センター 遺伝科, 2.神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科, 3.神奈川県立こども医療センター 臨床研究所, 4.神奈川県立こども医療センター 皮膚科, 5.神奈川県立こども医療センター 病理診断科)
【背景】Buschke-Ollendorff症候群(BOS)は、1967年に最初に報告された、常染色体顕性遺伝形式のまれな結合組織疾患で、皮膚病変と骨病変が主たる症状である。今回、無症状の父由来のバリアントによるBOSと診断した症例について報告する。本研究は、施設内倫理承認を受け、文書による同意のもとで行った。
【症例】初診時8歳男児。生下時から仙骨部の皮下腫瘤を認め経過観察していた。しかし、その後徐々に大小の皮下腫瘤が多発し、体幹四肢にも広がりが見られたため遺伝学的検査のため当科を受診した。皮膚生検で膠原繊維間にムチンの沈着を認めたが、全身骨レントゲン、尿中ウロン酸解析で異常を認めなかった。同胞の妹(初診時3歳)も同様の皮膚症状を認めた。
【結果】全エクソーム解析を行い、LEMD3遺伝子にc.298dupT:p.(Tyr100Leufs*85)のフレームシフト変異を認め、皮膚所見の一致からBOSと診断した。Sangerシーケンスによる家系解析を行ったところ父親と妹に児と同じ変異を認めた。父親の診察も行ったが、皮膚、骨に異常所見は認めなかった。
【考察・結語】LEMD3病的バリアントによるBOSは不完全浸透を呈し、さらに同一家系内でも症状の程度の差があることは知られている。しかし、無症状の父親由来の病的バリアントで発症した例は過去に報告が無く、本例が最初と思われる。これまで報告されたバリアントと臨床症状の多様性についてまとめた。