講演情報
[P11-6]FGD1新規変異を同定した指過伸展を有する母子例
○柴田 奈央1, 澤野 堅太郎1, 入月 浩美1,2, 長崎 啓祐1 (1.新潟大学医歯学総合病院小児科, 2.新潟大学医歯学総合病院遺伝医療センター)
【背景】Aarskog症候群(AAS)は、低身長、巨頭症、顔面、生殖器、骨格の異常を特徴としたX連鎖潜性の遺伝性疾患である。Xp11.21領域のFGD1変異が原因だが、AAS患者の表現型は不均一で、遺伝子型と表現型の相関関係も明らかではない。稀に女性保因者でAAS症状をきたすことが報告されており、これはX染色体の不活化の偏りで説明しうる。FGD1新規変異により、共通する指の過伸展を認めた母子例について報告する。【症例】発端者は9歳男児。身長121.2cm(-1.8 SD)、体重23.6kg、耳介低位、眼間開離、軽度の眼瞼下垂、鼻根部平低、長い人中、襟巻き陰嚢、両手近位指節間(PIP)関節過進展を認めた。上記症状からAASが疑われ、遺伝子検査でFGD1 c.1539 G>T, p.Met513Ileをヘミ接合性に同定した。母は49歳。身長157cm、特異的な顔貌なし。第2,5指の中手骨指節骨間関節(MP)過進展を認めた。遺伝子解析で発端者と同一の変異をヘテロ接合性に同定した。X染色体不活化解析では 54% : 46%と不活化の偏りは認められなかった。【考察】同定されたFGD1新規変異は健常日本人データベース(14KJPN)では登録がなく、複数のin-silico解析で病原性の判定であった。ACMGガイドラインに基づき、Likely Pathogenicと判断した。同変異をヘテロ接合性に有する母に部分的な関節過伸展を認め、X染色体不活化解析でも偏りがなかったことから、FGD1変異において関節症状が顕性遺伝する可能性が示唆された。【結語】FGD1変異の関節症状は顕性遺伝する可能性がある。