講演情報

[P11-8]Pierpont 症候群の3例:歌舞伎症候群との類似についての検討

長谷川 結子1, 西 恵理子1, 柳 久美子2, 瀬山 理惠3, 内山 由理3, 要 匡2, 松本 直通3, 岡本 伸彦1 (1.大阪母子医療センター 遺伝診療科, 2.国立成育医療研究センター ゲノム医療研究部, 3.横浜市立大学大学院医学研究科 遺伝学)
【背景】Pierpont 症候群(PRPTS)は先天性の複数の所見・症状を合併しうる知的障害(ID)を主症状とし、TBL1XR1遺伝子のミスセンス変異が原因である。稀少な疾患であり、症状や経過については詳細が不明である。【目的】当科でPRPTSと診断した患者らの顔貌・身体的所見は、歌舞伎症候群(KS)の特徴と一部類似していた。PRPTSを疑う上で有用と思われる所見・症状を報告する。【方法】基礎疾患が疑われ当科で遺伝学的検査を実施したが診断に至らず、原因不明のIDに対して全エクソーム解析を行い、TBL1XR1遺伝子の病的バリアントを認めPRPTSの診断に至った3例についてその臨床像を検討する。【結果】症例1;11歳女児。ID、筋緊張低下、てんかん、弱視、早発乳房。大耳、眉の外側の薄さ、手は肉厚で指尖部隆起あり。c.984T>A,p.D328E。症例;2歳男児。ID、動脈管開存症、矢状縫合早期癒合症、両側第1趾短縮症、両側第2指屈指症、筋緊張低下。摂食不良、成長障害。切れ長の眼、下眼瞼外反、眉の外側の薄さ、指尖部隆起あり。c.1108G>A,p.D370N。症例3;6歳女児。ID、ADHD、筋緊張低下、体重増加不良。c.1126T>C,p.W376R。3例に共通した点として1)重度知的障害、過敏性・こだわり、限定的な言語獲得。2)乳児期早期からの筋緊張低下の指摘あり。3)乳児期後期に摂食不良と体重増加不良を認めるが改善。4)特徴的な顔貌(切れ長の目、外側の眉の薄さ、下眼瞼外反など)、手掌・足底の脂肪が目立つ、指尖部隆起あり。【考察】症例1,2は顔貌の特徴より当初KSを疑い遺伝子検査を施行、病的バリアントは認めなかった。KSが疑われるが遺伝学的に診断がつかない患者の中に、PRPTSが含まれている可能性がある。より正確な診断を行うことで情報が蓄積され、適切な健康管理へ繋がることを期待する。