講演情報
[P12-1]MYORGの新規homozygous変異を認めた原発性家族性脳内石灰化症(PFBC)の2症例
○穂原 貴裕, 樋口 雄二郎, 児島 史一, 野口 悠, 湯地 美香, 吉村 明子, 安藤 匡宏, 橋口 昭大, 松浦 英治, 高嶋 博 (鹿児島大学病院 医歯学総合研究科 神経病学講座 脳神経内科・老年病学)
【緒言】原発性家族性脳内石灰化症(PFBC)は, 大脳基底核を始めとする両側性の脳内石灰化に伴い, 多彩な神経症状を呈する希少疾患である. 現在までに6つの原因遺伝子が報告され, 常染色体顕性遺伝としてSLC20A2, XPR1, PDGFB, PDGFRB, 常染色体潜性遺伝としてはMYORG, JAM2が報告されている. MYORGは2018年に初めてPFBCの原因遺伝子として報告され, PFBC全体の10%程度と推測されている. 他の5遺伝子に比べて広範な脳内石灰化が見られるとされる. 今回, 当院で上記6遺伝子の検査を行った脳内石灰化症例の中で, 2症例で新規のMYORGのhomozygous変異を認めた. 正確な病態が解明されていない疾患であり, 臨床症状・画像所見を含めて報告する. 【症例1】53歳男性. 34歳時, 歩行障害・巧緻運動障害で発症. 39歳の病院受診時, 右優位の小脳性運動失調, 体幹失調, 錐体路徴候を認めた. 小脳性運動失調は継時的に進行し, 43歳で構音障害が出現し, 46歳で車椅子移動となった. 49歳頃から上下肢のジストニアなどの不随意運動を認め, 53歳で誤嚥性肺炎のため死去された. 頭部CTでは両側基底核・視床・中脳・橋・小脳の著明な石灰化に加えて, 両側大脳・小脳の萎縮を認めた. また同胞2名にも同様の脳内石灰化を認め, 3兄弟全てでMYORGの新規c.488G>T, p.W163L homozygous変異を認めた. 【症例2】52歳男性, 28歳時に構音障害で発症. 43歳頃うつ病を指摘された. 51歳頃から歩行障害が出現し, 感情失禁や脱抑制が見られるようになり, 精神科に入院. 頭部CTにて両側側脳室周囲・基底核・橋・小脳に著明な石灰化を認め, 小脳萎縮も認めた. 遺伝子検査でMYORGの新規c.2135G>A, p.W712Terのhomozygous変異を認めた. 【結論】広範な脳内石灰化を呈する2症例でMYORG遺伝子に未報告のhomozygous変異を認めた. 今後MYORGの遺伝子変異型と表現型の相関を明らかにするため, 更なる症例の蓄積が望まれる.