講演情報
[P12-2]良性発作性成人型ミオクローヌスてんかん(BAFME)における伸長リピート配列がもたらす病態機序の検討
○三枝 亜希1,2, 石浦 浩之2, 辻 省次2,3, 戸田 達史2 (1.帝京大学ちば総合医療センター 脳神経内科, 2.東京大学医学部附属病院 脳神経内科, 3.国際医療福祉大学 ゲノム医学研究所)
【目的】良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(benign familial myoclonus epilepsy: BAFME)は、SAMD12、RAPGEF2、TNRC6A、MARCH6、STARD7、YEATS2のイントロンのTTTTA/TTTCAリピートの異常伸長が原因変異として報告があるが、発病の機序は明らかでない点も多い。本研究では、BAFMEにおけるSAMD12の発現量と、リピート異常伸長からのATGに依存しない蛋白質の翻訳(Repeat-associated non-ATG; RAN翻訳)の関与を検討した。【方法】BAFME患者10例(ホモ接合性 2例、ヘテロ接合性 8例)、正常コントロール 10例のリンパ芽球様細胞からtotal RNAを抽出し、qRT-PCRでSAMD12のtranscript variant1(エクソン1-5迄あり、イントロン4にTTTTA/TTTCAリピートが存在), 2(エクソン1-4迄)の発現量を比較した。また、RAN翻訳が生じるとEGFPが発現するプラスミドにSAMD12の(TTTTA)65(TTTCA)70リピートを挿入し、HEK293細胞にトランスフェクションした。EGFPの発現を蛍光顕微鏡とWestern blot analysisで検証し、RAN翻訳の有無を評価した。【結果】リンパ芽球様細胞では正常コントロールと比してBAFME患者のSAMD12の発現量低下は認めなかった([transcript variant1]ホモ接合性(p=0.55), ヘテロ接合性(p=0.27), [transcript variant2] ホモ接合性(p=0.44), へテロ接合性(p=0.14))。また、(TTTTA)65(TTTCA)70リピートからのRAN翻訳を示すEGFPの発現は認めなかった。【結論】qRT-PCRの結果からはBAFME患者でSAMD12の発現は大きくは減じていないと考えられるが、リンパ芽球様細胞を用いており脳での発現と必ずしも一致しない可能性は留意すべきである。また、in vitroの検討でRAN翻訳が生じている証拠は得られなかったが、リピート数がBAFME患者のものよりも短縮している点や、RAN蛋白が極微量で検出できない可能性、RAN翻訳が細胞種特異的に起こる可能性等もあり、今後さらに長いリピート長や他細胞種を用いた検討が必要と考えた。