講演情報
[P12-4]重度の発達遅滞と不随意運動を認めたGRIN2A関連疾患の一男児例
○久保田 一生1,2,3, 幅 あずさ1, 仲間 美奈4, 山本 崇裕1,2, 平出 拓也5,6, 中島 光子5, 足立 美穂1, 才津 浩智5, 大西 秀典1,2,3 (1.岐阜大学大学院 医学系研究科 小児科学, 2.岐阜大学大学院 医学系研究科 小児在宅医療教育支援センター, 3.岐阜大学医学部医学部附属病院 ゲノム疾患・遺伝子診療センター, 4.近畿大学 理工学部 生命科学科, 5.浜松医科大学 医化学, 6.浜松医科大学 小児科)
【緒言】GRIN2A遺伝子はNMDA型グルタミン酸受容体α2サブユニットであるGlu2Aをコードし、言語障害や自然終息性てんかんからてんかん性脳症など重度の表現型まで幅広い臨床スペクトラムに関与する。今回我々は、重度の発達遅滞と不随意運動を認めたGRIN2A関連疾患の症例を経験したので報告する。【症例】4歳の男児で大島分類1の重症心身障害児。切迫早産のため在胎36週2日、2810gで仮死なく出生した。神経筋疾患の家族歴はなし。2か月より易刺激性と、啼泣とともに眼球が偏位し、反り返る症状を毎日認めるようになった。口をもぐもぐさせたり、顔をしかめたり、多量の発汗を伴うこともあった。3か月時に精査目的で当院に紹介となった。身体所見では特記すべき所見はなかった。血液検査、髄液検査、頭部MRIの各検査も異常所見を認めず、染色体検査は正常男性核型であった。発作時脳波からてんかん発作による症状は否定的で、不随意運動と考えた。異常眼球運動と不随意運動を認めることから鑑別疾患に神経伝達物質病を考え、プテリジン分析を行ったが神経伝達物質病を積極的に疑う所見ではなかった。また、非対称な眼球の動きも認めたことから小児交互性片麻痺の可能性も考えてATP1A3遺伝子検査を行ったが病的バリアントは認めなかった。1歳3か月時に全エクソーム解析を行ったところGRIN2A遺伝子にc.1904C>T:p.(Ala635Val)をde novoで認めた。アレル頻度の登録がない稀なバリアントで、同じ部位で別のアミノ酸置換を伴うミスセンスバリアントの報告があり、ACMGガイドラインでlikely phathogenicと判定した。不随意運動は難治に経過し、重度の精神運動発達遅滞のため現在も頸定なく寝たきりの状態である。【結語】GRIN2A関連疾患では25%に不随意運動を認め、てんかんを合併せず不随意運動のみを認める症例の報告もある。運動障害を主症状とする症例でもGRIN2A遺伝子の関与を考慮する必要がある。