講演情報
[P12-5]乳児期に血栓症を繰り返し遠隔期に脳出血をきたしたJacobsen症候群の1例
○道和 百合1, 森田 孝次1, 椎原 隆1, 山口 有2 (1.群馬県立小児医療センター 神経内科, 2.群馬県立小児医療センター 遺伝科)
Jacobsen症候群(11q欠失症候群)は、新生児期の血小板減少と持続性の血小板機能異常を合併することが知られている。乳児期に血栓症を繰り返し、学童期に出血性疾患を発症した症例を報告する。【症例】9歳男児。在胎41週、正常分娩で出生。顔貌的特徴、軽度血小板減少、左心低形成を認めた。G分染法、FISH法、マイクロアレイ検査 (CytoScan HD array, Affymetrix)の結果は46,XY,del(11)(q23.3q25),arr[hg19]11q23.3q25(119,484,933-134,938,470)×1だった。血小板数は自然に回復した。日齢5、両側肺動脈絞扼術施行後、左肺動脈狭窄が進行し、生後2か月、左肺動脈が完全閉塞したため動脈管ステント留置術、生後3か月、肺動脈絞扼解除術、生後4か月、左肺動脈血栓除去術を施行された。血栓除去後2週間で、再度完全閉塞した。生後5か月、Norwood手術と左肺動脈形成術施行。術中、大動脈弓吻合部の止血に時間を要し、術後、血腫による心タンポナーデとなった。生後3歳、両大静脈肺動脈吻合(Fontan手術)を受けた後は、アスピリン、エナラプリル内服で、血行動態は安定して経過していた。9歳11か月、便秘でグリセリン浣腸をかけた後、意識障害となり、救急受診した。頭部CTで、右被殻出血、脳室内穿破を認め、急性期治療を行った。左片麻痺の後遺症を残した。頭部MRI所見で、白質異常信号は乳児期から持続しており、MRAで、脳動脈瘤などの血管系の異常を認めなかった。【考察】Jacobsen症候群の血小板減少、血小板機能異常は、11q24.3に存在する転写因子FLI1のハプロ不全に起因するといわれている。Jacobsen症候群の患者の死因は、先天性心疾患、出血、免疫不全が多いといわれている。Jacobsen症候群で複雑心奇形を合併する場合、抗凝固療法が必要になることもあり、出血性疾患には、常に留意する必要がある。